上海市で2019年8月29日から2日間開かれた「世界人工知能(AI)大会」は、極めて興味深い催しだった。
「2030年までにAI分野世界一を目指す」という国家目標を掲げる中国政府の国家発展改革委員会が中心となった大会には、アマゾン、マイクロソフトなど巨大IT企業のトップが集結し、「貿易戦争」とまで呼ばれる激しい中米間の経済摩擦など、どこ吹く風と言わんばかりの様子だった。そして、日本企業の存在感の乏しさが、今さらながらに気になった。
マーとマスクのトップ対談も
中国からは「アリババグループ」の創業者、馬雲(ジャック・マー)氏らネット業界トップが多数参加。マー氏は米電気自動車(EV)大手、テスラの最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏と、AI技術の今後の発展や人類に及ぼす影響について公開対談で語り合い、息の合った様子を聴衆に印象づけた。上海郊外に新工場を建設しているマスク氏は「こんなに速く進んだ事業はない」と、「中国での仕事のスピード感」をたたえた。
マイクロソフトは大会で、自社の麻雀AI「スーパーフェニックス」が麻雀プロにも負けない成績になるまで性能を上げていると発表。各ブースを見て回っても、人気の中心はやはりアメリカ企業で、どこも人だかりがしていた。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)はAIを使ったクラウドサービスを展示。AIを使ってビッグデータを高速処理していくイメージをはっきり具体化していた。
一方、日本企業はといえば、ファナックのブースが目立ったくらい。それも、どこかこざっぱりしていて、展示内容も豊かとは言えない。それもあってか、アメリカ企業のブースにあったあの熱気がどうも足りないように見えた。先日「日本はAI後進国になってしまった」と公開の場で憂えたのは孫正義氏だが、私には、この「影が薄い日本」という現象が何もAI分野に限った話ではなく、日本の対中国ビジネス全般に及ぶ気がした。一体その背景に何があるのか。たまたま今回、大会会場を一緒に訪れた日本企業の複数の幹部(いずれも中国ビジネスに携わる人たちだ)と訪問後、アルコールも交えながら語り合う機会があった。その一端をご紹介しよう。