国鉄時代から60年「急行型電車」ついに消滅へ 七尾線「最後の2両」置き換え発表

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   JR西日本は2019年9月10日、石川県の七尾線(金沢・津端~七尾)に新たにに521系電車を2020年秋から導入すると発表した。また2021年からは七尾線もICOCA対応とする計画である。

   これにより既存の413系・415系電車が置き換えられ廃車となる計画だが、同系には、現存2両だけになった「急行型電車」が残っていた。1960年代から全国で活躍したこの急行型電車という系列が、60年以上の歴史に終止符を打つことになる。

  • 日本に2両だけ残った急行型電車の1両のクハ455 701(写真は旧塗装 Wikimedia Commonsより)
    日本に2両だけ残った急行型電車の1両のクハ455 701(写真は旧塗装 Wikimedia Commonsより)
  • 一部の座席が改造されたが、クロスシートに往年の急行型のスタイルが残っている車内(Wikimedia Commonsより)
    一部の座席が改造されたが、クロスシートに往年の急行型のスタイルが残っている車内(Wikimedia Commonsより)
  • 日本に2両だけ残った急行型電車の1両のクハ455 701(写真は旧塗装 Wikimedia Commonsより)
  • 一部の座席が改造されたが、クロスシートに往年の急行型のスタイルが残っている車内(Wikimedia Commonsより)

「455系」の数少ない生き残り

   七尾線で普通列車として運用されている413系・415系の中には、「クハ455 701」「クハ455 702」という車両がある。これはこの2両が本来は413系でも415系でもなく、455系という急行型電車の生き残りであることを示している。

   急行型とはその名の通り国鉄時代に急行列車用に製造された車両を指し、デッキ付き・クロスシート・片開き2扉という装備である。前述の2両も、一緒に編成を組む車両が両開き扉なのに対して片開き扉で、車両の違いがわかる作りだ。

   JR在籍のすべての電車の編成と車歴を収録した「JR電車編成表2019夏」(ジェー・アール・アール編 交通新聞社発行)の末尾、在来線車両一覧「形式別の両数と動向」のページに、この2両だけが今も「交直流急行用」に分類されている。他に急行用に分類される電車はなく、普通列車向けの編成に組み込まれてはいるが急行型電車の生き残りはこの2両だけといえる。本来は全車廃車済の455系という系列に属していたのだが、改造と編成替えで413系に組み込まれた幸運で2019年まで現役で残っていた。

本来の用途から追われ...60年の歴史

   昭和30年代に全国で増発が始まった準急・急行列車用として、1958年から導入された153系電車がこの急行型電車のはしりとなった。以後、山岳路線用の165系、交流電化路線向けの455系などが開発される。車両形式は違っても前述のデザインと内装は共通で、急行型は日本全国でポピュラーな存在になった。当時は特急よりも本数が多く安い急行料金で乗車できたので、大衆には身近な長距離優等列車だった。

   しかし昭和50年代から急行列車の廃止や新幹線の建設が進むと、これらの急行型電車は徐々に活躍の場を追われていく。本来の目的だった急行列車からは1996年3月に165系電車の急行「東海」の特急格上げを最後に撤退、以後は普通列車や臨時列車運用がメインになるが、普通列車では2扉デッキ付きの設備が災いして乗降に時間がかかる短所も露呈した。

   このような経緯で、国鉄のJRへの民営化後も東日本・東海・西日本・九州の各社で現役だった急行型電車は既にJR西日本以外では全廃、ほぼオリジナルのスタイルをとどめるのは七尾線の2両を残すのみだった。同線の在籍車両は大半が車齢50年を超えるなど老朽化が進んでおり、521系導入に伴い前述のクハ455 701とクハ455 702も含めた全車両が廃車されるとみられる。60年以上鉄路を走り続け、「急行型」で鉄道ファンにその意味が通じた急行型電車の命脈は、2020年で終わることになる。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)

姉妹サイト