北朝鮮が2019年 9月10日、西部の平安南道价川(ケチョン)市から東方向に向けて、飛翔体2発を発射した。北朝鮮による飛翔体の発射は8月24日以来、およそ半月ぶり。
北朝鮮が問題視してきた米韓合同軍事演習は、19年分はすでに終了。9月9日に北朝鮮自ら米朝対話再開の意志を示したばかりだった。その直後の発射の狙いはどこにあるのか。
今回の発射が「精度と飛行性能、誘導機能を最終試験した段階」の可能性
韓国軍合同参謀本部の発表によると、飛翔体は6時53分頃と7時12分頃の2回に渡って発射され、最大飛行距離は約330キロ。聯合ニュースによると、最大高度は40~60キロだ。
これに対して、8月24日の飛翔体は金正恩委員長立ち合いで発射され、北朝鮮側は「新たに研究、開発した超大型ロケット砲」だったと主張。韓国側の分析では、約380キロを飛行し、最大高度は97キロだったと推定されている。
聯合ニュースによると、韓国側は今回の飛翔体が8月24日と同様の「超大型ロケット砲」だという可能性にも重点を置いて分析を進めている。仮にそうであれば、今回の発射が「精度と飛行性能、誘導機能を最終試験した段階だと言える」(軍専門家)ためだ。
発射の既成事実化を進める狙い?
北朝鮮が問題視してきた米韓合同軍事演習は、8月5日から20日にかけて行われた。前回の発射はその4日後で、今回はさらにその半月後の発射だ。北朝鮮としては、米韓軍事演習の有無にかからず発射を重ねることで、技術の高度化を図っている可能性もある。
北朝鮮では崔善姫(チェ・ソンヒ)第1外務次官が9月9日、国営朝鮮中央通信を通じて
「われわれは、9月の下旬頃、合意する時間と場所で米国側と対座して今までわれわれが論議してきた問題を包括的に討議する用意がある」
などする声明を出し、対話再開の意志を示したばかりだ。国連安保理の制裁決議では、弾道ミサイルの技術を用いた発射実験を禁止している。北朝鮮としては、一連の「飛翔体」が弾道ミサイルではないと主張することで米国との対話の余地を残しつつ、発射の既成事実化を進める狙いがある可能性もある。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)