ニッポン放送「台風ダウン」とAMの未来 radiko、FM転換...今後の議論に影響も

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   首都圏に大きな被害を与えた台風15号の影響で、2019年9月10日12時現在、ニッポン放送木更津送信所(千葉県木更津市)からの電波送出が停止している。

   1242kHzからのAMラジオ放送は、予備の足立送信所(東京都足立区)に切り替えて継続しているが、出力が通常の100分の1となっているため、「聞こえなくなった」といった声が出ている。

  • ラジオにも台風の影響が
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非常用電源が故障

   ニッポン放送では通常、木更津送信所から1242kHz(AM)、東京スカイツリー(墨田送信所、東京都墨田区)から93.0MHz(FM)、そしてradiko(ラジコ)でのネットストリーミング放送の3本立てで放送している。

   しかし、「垣花正 あなたとハッピー!」放送中の10日8時33分ごろから、ツイッターでは「あれ...ニッポン放送途切れた!」「聴こえなくなった?」といった指摘が続出。8時38分ごろに番組中で、木更津送信所からの送出が停止し、足立送信所からの減力放送となっていると伝えられた。ワイドFMとradikoは通常通りだとし、ニッポン放送の公式ツイッターでも8時47分、同様の趣旨が投稿された。

   ニッポン放送は10日11時すぎ、公式サイトで送信停止までの経緯を説明した。それによると9日3時23分、東京電力から木更津送信所への電力供給が停止し、非常用発電機に切り替えた。しかし10日8時31分に非常用電源が故障し、35秒間の停波を経て、足立送信所へ切り替えた。電力供給の復旧は、10日夕方から夜にかけての見込みだと東電が説明しているとして、その後に木更津からの送信も復旧するとしている。

神奈川では「聞こえなくなった」との声も

   木更津送信所では電波の出力が100kW(キロワット)だが、「予備」と位置付けられている足立送信所は1kWと、100分の1となる。電波の届く範囲は、出力に応じて変化するため、当然ながら聞こえるエリアは小さくなる。実際に「あなたとハッピー」では、神奈川県大和市や伊勢原市、横浜市のリスナーらから、「突然聞こえなくなった」といったメッセージが送られてきていると紹介していた。

   在京AM局はニッポン放送をはじめとして、東京都内ではなく、郊外にメインの送信所を置いている。文化放送は埼玉県川口市、TBSラジオは戸田市にあり、それぞれ100kWで出力している。ちなみに文化放送は東京都新宿区、TBSラジオは港区に、それぞれ出力1kWの予備送信所を持っている(いずれも総務省サイトの「無線局免許状等情報」参照)。各局ともに、もしもの時のバックアップ体制は用意しているが、聴取できるエリアは大幅に縮小する。

   この10年ほどで、AMラジオを取り巻く環境は、大きく変化した。とくに2010年のradikoスタートにより、インターネット経由でも放送が流れ、難聴エリアのカバーだけでなく、受信機を持たない新たなリスナー層へのアピールも可能になった。

   AMラジオでは、難聴や災害対策のために、FM波での補完放送も開始した。在京3局は15年12月から、「ワイドFM」の愛称で東京スカイツリーからの送出をはじめ、各番組内でもAMと準ずる形で、FMの周波数も紹介している。radikoもワイドFMもエリア補完が目的のひとつだが、音質が向上するのもメリットとなっている。

岐路に立たされているAMラジオ

   ただ、伝達手段が増える一方で、AM波そのものの存在価値は問われている。19年8月30日に行われた、総務省の有識者会議「放送事業の基盤強化に関する検討分科会」(第7回)では、AMラジオ局の放送設備の老朽化などを踏まえて、FMラジオ局への転換を容認すると決めた。

   現状のAM局は、FM補完放送も併用しているが、この「二刀流」の経済的負担を減らすのが目的で、日本民間放送連盟(民放連)が要望していたものだ。20年秋をめどに具体案を公表し、23年には「実証実験」として停波する局も出る方針となっている。

   一方で、有識者会議の「AMラジオ放送のあり方に関する取りまとめ(案)」では、今後検討すべき課題として、(1)カバーエリアの観点(2)対応受信機の観点(3)周知広報の観点(4)周波数の効率的な利用の観点の4つをあげている。これらの議論を進めていくうえで、今回の台風15号、そしてニッポン放送の事例は、大きな検討材料になりそうだ。

(J-CASTニュース編集部 城戸譲)

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