集英社のマンガアプリ「少年ジャンプ+(プラス)」が本誌「ジャンプ」を超えんばかりの勢いだ。2019年3月連載開始の「SPY×FAMILY」(スパイファミリー)は、たちまち閲覧数トップクラスに躍り出て、7月4日発売の単行本1巻の発行部数は30万部を突破し重版も実現した。
2014年のアプリ配信から5年、「ジャンプを倒す」という広告を当時掲げたジャンプ+の何が実を結びつつあるかを取材した。
「1回限り全話無料」でユーザー獲得
ジャンプ+では週刊の「ジャンプ」本誌と違い、連載中の作品は曜日ごとに更新されていくため、毎日何かしらの作品の最新作が配信されるのが特徴だ。中には「終末のハーレム」のようなヒット作も生まれ、またジャンプ本誌のスピンオフ作品(ヴィジランテ-僕のヒーローアカデミアILLEGALS-)、や、集英社の他誌連載作品の続編(花のち晴れ~花男 Next Season~)など間口は広い。
ジャンプ本誌同様に新人作家の発掘と育成も重視している。マンガ投稿サービス「少年ジャンプルーキー」であれば、いつでもマンガを投稿できる。配信開始当初から続けてきたことで、「新人作家の育成施策が順調に進んできた」とジャンプ+編集部も成果を認めている。
毎日更新という更新速度の速さに対して、19年4月に、ユーザーがアプリをインストールした後、オリジナル連載作品については1回限りで全話閲覧無料にするリニューアルを行った。これによりライトユーザーでも連載中のストーリーに追いつくことができ、ジャンプ+の読者数の底上げにつながったと同編集部はみている。閲覧数が上位の作品を、ライトユーザーが無料で読める相乗効果でヒット感を出し、話題性とヒット作をもたらす効果もあった。「SPY×FAMILY」もこれらの施策がマッチしたといえる。
もともとジャンプ本誌は読者アンケートを極めて重視する、結果至上主義の媒体。その本誌をはるかにしのぐ掲載作品数が広いジャンルで読者を集め、自由な競争でヒット作が押し上げられ、活況を呈してきたというわけだ。