7―41。完敗と言うべきか、惜敗と言うべきか――。
2019年9月20日に開幕する「ラグビーW杯2019日本大会」を2週間後に控えた9月6日、日本代表(世界ランク10位)は、南アフリカ代表(同5位)とのテストマッチ(国際試合)を埼玉県・熊谷ラグビー場で行った。
観客数は2万2258人。「日本一暑い」と言われる熊谷が、最高にヒートアップした。しかし、結果は34点差の敗北。「W杯8強」以上を目標とする日本代表は、この現実を、どう受け止めるべきなのだろうか?
J-CASTニュースでは、元日本代表SH(スクラムハーフ)で、トップリーグ(TL)キヤノン・イーグルスの永友洋司GM(明治大―サントリー)に話を聞いた。
「諸刃の剣」であるキック...求められる修正力
体格では、南アが圧倒的に有利。一方の日本代表は、ボールを速く動かすべく、パスやキックを多用する戦術が持ち味である。日本代表は、司令塔でもある背番号「10」SO(スタンドオフ)の田村優選手が、得意のロングキックやハイパント(高く上げるキック)を使い、敵陣へとなだれ込む戦術を取った。しかし永友氏は、
「『キックチェイス』が機能していなかったですよね。負けたにしても『負け方』がよくなかった。自滅した印象です」
と、試合を振り返る。
「チェイス」とは、英語で「chase」と記す。ハリウッド映画などであるカー・チェイスの「チェイス」だ。「キックチェイス」は、言わば自軍が蹴ったボールを追いかけることを指す。それが機能していなかった...と、永友氏は指摘する。
「ラグビーにおける戦術的キックは『陣地を取る』際に有効に作用することも考えられますが、一方でマイボールを『相手に与えてしまう』といったプレーでもあります。いわば『諸刃の剣』ですよね。しかし、今回は蹴った後の『追いかけ方』が、組織的に機能していなかったな...という印象です」
実際、日本代表は「世界の韋駄天」と呼ばれる左WTB(ウイング・スリークオーター・バックス)の福岡賢樹選手が前半早々に欠場。その後は選手交代を行ったが、全体として「バックスリー(両ウイングとFB=フルバックの3人)」が、組織的に機能していない印象が拭えなかった。
「スクラムは良かった!」
一方で、プラス材料もある。永友氏は、
「スクラムは十分、組めていたと思います。相手は世界屈指のFWですから。そこは、選手にも大きな自信になったと思います」
と、交代選手も含めた活躍を賛辞する。
9月20日の開幕(ロシア)戦まで2週間を切った。右ふくらはぎを負傷した福岡選手、後半にはNO・8のアマナキ・レレイ・マフィ―選手も右肩を押さえて負傷退場したが、もう四の五の言っていられる状況ではない。目標の「8強」以上を叶えるため、ここが正念場だ。
(J-CASTニュース編集部 山田大介)