業況は上向いているとの見方だが...
海運業界は2019年3月期、不採算路線の整理やコンテナ船運航の大手3社統合という痛みを伴う荒療治を断行。大手3社中、日本郵船が445億円、川崎汽船が1111億円という巨額の最終赤字を計上した。しかし、2020年3月期に入って業況は上向いているというのが、最近の海運大手の状況だった。
2018年4月に事業を始めた3社統合のコンテナ船運航会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」の最終損益は2019年4~6月期に四半期ベースで初めて黒字転換した。31%を出資し持ち分法適用会社とする川崎汽船としても朗報だ。各社の自動車船事業も復調しており、大手3社とも2019年4~6月期連結決算は最終黒字に転換。川崎汽船の最終損益は77億円の黒字(前年同期は192億円の赤字)だった。
ただ、米中貿易摩擦は日を追うにつれ、エスカレートの一途をたどり、川崎汽船株の下落を促すこととなった。また、船舶の運航に使う燃料の新規制が2020年1月に始まることでこれまでより高くなる燃料費を荷主に転嫁しきれないリスクがあるとの見方も悪材料だ。
こうした中、ばら積み船市況の総合的な値動きを示す「バルチック海運指数」が8月末に約8年10カ月ぶりの高水準をつけたとして、海運株が買われた。ホルムズ海峡の緊迫化によって保険料上積みが見込まれることや、米中間の関税が上がる前の駆け込み需要が背景にあるようだ。川崎汽船株も9月に入って伸びが続き、6日時点では1200円台半ばまで戻した。
とはいえ、2月の年初来高値(1666円)はまだ遠い。米中摩擦に翻弄される日々は、まだ続きそうだ。