柏崎原発「一部廃炉」の曖昧さ 東電は再稼働を本当に「諦めた」のか

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   東京電力ホールディングスが、新潟県の柏崎市と刈羽村にまたがる柏崎刈羽原子力発電所について、全7基の原子炉の一部廃止を検討していると柏崎市に伝えた――新聞・テレビ各社が一斉に報じたのは、2019年8月26日のことだ。

   柏崎市などは同原発6、7号機の再稼働を2年前に容認している。その代償として「東電が1~5号機の再稼働を諦めた」――と考えるのは早計かもしれない。

  • 柏崎原発の今後は(Triglavさん撮影、Wikimedia Commonsより)
    柏崎原発の今後は(Triglavさん撮影、Wikimedia Commonsより)
  • 柏崎原発の今後は(Triglavさん撮影、Wikimedia Commonsより)

「廃炉も想定したステップ」=廃炉検討?

   東電の小早川智明社長が柏崎市役所を訪れ、桜井雅浩市長に「柏崎刈羽原子力発電所の再稼働および廃炉に関する基本的な考え方」と題した4ページの文書を手渡した。文書はまず、東電の「将来の電源構成のあり方」として、「安全を最優先に『安定供給』『経済性』『環境』の観点から多様なエネルギー源を用いて電源を構成していく」意向だが、「低廉で安定的かつCO2排出量の少ない電気」の見通しは現時点では得られていないと説明。柏崎刈羽原発については、6、7号機の安全対策工事などを進めているものの、前述の見通しが立っていない以上、1~5号機も「低廉で安定的かつCO2排出量の少ない電気」を供給する上で必要な電源だとした。

   ここまでは、東電が柏崎刈羽原発をそのまま存続する意向のように読めるが、ここで突然、「十分な規模の非化石電源の確保が見通せる状況となった場合」と前提を置いて、「6、7号機が再稼働した5年以内に、1~5号機のうち1基以上について、廃炉も想定したステップを踏んでまいります」と記している。これをもって新聞・テレビ各社は「柏崎刈羽の一部廃炉検討」などと報じているが、そう言い切れるのだろうか。疑問を呈する向きもある。

   確かに東電が柏崎刈羽原発の廃炉の可能性に言及したのは初めてだが、洋上風力発電を想定した非化石電源が「十分な規模」を確保できるかどうかを判断できる時期は、かなり先になると考えるべきだろう。「廃炉も想定したステップ」も極めて曖昧な表現だ。「廃炉を検討する」よりも相当弱い。文書は「廃炉」に言及してはいるものの、予防線を二重三重に張っている分かりにくい構成だと言えよう。

市長の体面に東電が配慮?

   そもそもこの文書は、2017年6月、桜井市長が6、7号機の再稼働を認める条件として、1~5号機の廃炉計画を2年以内に示すよう東電に要請していたことへの回答だ。上記のような曖昧さを残しながらも、桜井市長は一部新聞報道によると「できる限りの案を出していただいたことは評価する」と小早川社長に応じ、9月4日の会見では「合格点ではない」としつつ、受け入れる意向を示した。

   この文書とやり取りを深読みするなら――東電は福島第1原発事故の賠償金を支払い続けながら、福島第1、第2原発の廃炉費用を捻出する必要がある。それには残された柏崎刈羽原発の再稼働が不可欠だ。2年前に6、7号機の再稼働について地元の言質を得た東電は、1~5号機の再稼働の可能性をできるだけ残しながらも廃炉に言及して、桜井市長の体面に配慮した。一方、条件付きの再稼働容認を掲げて2016年に初当選した桜井市長は、東電から「廃炉」を引き出して自身の公約を守った――そんな見方も不可能ではない。「廃炉も想定したステップ」に進む時期を「再稼働した5年以内」としたこともミソで、再稼働の5年後には小早川社長も桜井市長もそのまま在職している保証はない。

   こうした電力会社と地元の「出来レース」は、柏崎刈羽原発に限らず、これまでも程度の違いこそあれ各地で繰り広げられてきた。今回は――。

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