「私の愛する『鉄道』を壊した方へ」――大阪府茨木市の線路沿いに掲示された張り紙に注目が集まっている。
鉄製のフェンスが壊れているのを見たJR西日本・近畿統括本部・高槻保線区の社員が書いたもの。ただその内容は、「私自身も物心ついたときから、鉄道一筋のファンです」「しかし、鉄道施設であるフェンスを壊してまで撮影する方の気持ちは、私には理解出来ません」など、通り一辺倒の注意書きではないことが伺える。
「私たちの大切なお客様の命を運んでいます」
張り紙は2019年9月5日、ツイッターユーザーが写真を投稿して話題を呼んだ。JR総持寺駅-茨木駅間にあり、撮影スポットのようになっている場所の鉄製フェンスに掲示されていたという。
文章は8月29日付で、「西日本旅客鉄道株式会社 近畿統括本部 高槻保線区に所属する本件対応に携わった鉄道ファンの社員より」との名義。「私の愛する『鉄道』を壊した方へ」と題され、「あなたが撮影しようとしている列車は、私たちの大切なお客様の命を運んでいます。例え貨物列車でも、誰かの大切な想いの詰まった荷物を運んでいます」と、列車の撮影をメインとする鉄道ファン、いわゆる「撮り鉄」に向けたもののようだ。
張り紙の「筆者」は、「私自身も物心ついたときから、鉄道一筋のファンですので、インターネットでファンの方の写真や動画を拝見し、愉しませて頂いています。私たちの列車を安全に美しく撮影して頂いている方には感謝します。いつも本当にありがとうございます」と自身も鉄道ファンであり、撮り鉄の写真も見て楽しんでいることを明かしている。だが、続けてこんな悲痛な思いがつづられる。
「しかし、鉄道施設であるフェンスを壊してまで撮影する方の気持ちは、私には理解出来ません。このフェンスは正式には『線路立入防止柵』と言い、線路内に人が立ち入り、列車と接触して死亡したり怪我したりすることが無いように設置している、極めて重要な線路設備です。あなたが大好きな鉄道の、そんな重要な設備を壊して、何とも思いませんか? 鉄道施設を壊してまで写真を撮影する方は、私は同じ鉄道ファンとは思いません」
「フェンスの被害が1回だけでなく複数回あった」
記述によると、器物損壊の事案として警察に相談しているという。「被害が続くようなら、『この場所を封鎖する』『フェンスの材質変更』等により、物理的にここから写真撮影が出来なくなるようにせざるを得ません」と対策をとることも検討しているものの、
「そこまでしたくありません。だから、もう壊さないでください。この気持ちが、きっとあなたに伝わると、私は信じています」
との思いも書かれている。
フェンスの被害はもとより、単調な注意喚起ではないその内容にはツイッターで「切実すぎて泣ける」「読んで物凄く心が打たれました。こうゆう鉄道ファンの方がいなくなる様に願っています」「なんかこれほどいい事書いてる警告文見たことない...」といった共感の声があがった。
一体どんな経緯でこの張り紙が掲示されたのか。JR西日本・近畿統括本部の広報は6日、J-CASTニュースの取材に、確かに高槻保線区の担当社員が書いたものだとしたうえで「フェンスの被害が1回だけでなく複数回あって、警察にも相談はしています。網目の部分が破壊され、補修してもその補修部分がまた被害に遭っていたという状況でした」と話す。
破損が撮り鉄によるものかどうかははっきりと証拠があるわけではない。ただ、複数回同じ箇所が破壊されていることや、近道のために通るような場所でもないことなどの状況から、今回の内容になった。書いた社員自身も鉄道好きであることから、「もし鉄道ファンが破壊していたとしたら悲しい。迷惑な目で見られてほしくない。でも誰も傷つけたくない」との思いがあったと担当者は話している。
(J-CASTニュース編集部 青木正典)
JR総持寺~茨木間の撮影地に新しく貼られた警告文
— [A]JR京都線民 (@i4_225) September 5, 2019
管理物のフェンスの穴開けてまで撮影するとか頭おかしいんじゃないの pic.twitter.com/Gey4LOjICu