フランス南西部ビアリッツで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、貿易や気候変動問題などをめぐり、米国第一主義と欧州諸国の国際協調主義の溝は深かった。
民主主義や自由貿易といった共通の価値観を掲げて世界の政治・経済秩序をリードしてきた姿はもはやなく、さまよえるG7を改めて印象付けることになった。
「首の皮1枚」つながったが...
2019年8月24、25日(日本時間25、26日)のG7は、世界経済や貿易、外交と安全保障、気候変動、デジタル経済などを討議。閉幕後、議長国のマクロン仏大統領は2020年の議長であるトランプ米大統領と共同記者会見し、今サミットの合意内容を「首脳宣言」と銘打った1枚の文書を発表した。
1975年のG7サミット開始以来初めて、首脳宣言を見送るとの「前宣伝」が効いていたため、最小限の内容の文書で結束を演出しようとのマクロン大統領の苦労を伺わせ、マスコミは「首の皮『1枚』(つながった)」などと報じた。
ただ、宣言の内容は対立を際立たせないため概ね原則論にとどまった。貿易問題では「G7は,開かれた公正な世界貿易及び世界経済の安定にコミットしている」と記しただけで、2018年のカナダでのサミットの宣言にあった「反保護主義」の文言は入らなかった。イランについては「有志国連合」に触れずにイランの核保有阻止と地域の平和と安定を謳った程度。他にウクライナ、リビア、香港に言及したが、フランスが重視した地球温暖化は一言もなかった。27日にフランス政府が宣言とは別に発表した「議長総括」で、温暖化を防止するためのパリ協定に沿ってG7が主導する姿勢を示したが、パリ協定から離脱した米国との対立の深さを示した。