「ノースペット」(北海道夕張郡)が製造したペットフードからサルモネラ菌が検出され、15匹の犬が死ぬなど健康被害を招いた一件で、別の商品も汚染されていた疑いがあることが2019年9月3日、分かった。
同社は、「念のため」、汚染の疑いのある商品の出荷停止を決め、第三者機関に検査を依頼する。
細菌基準がないペットフード
ノースペットは9月3日、15匹が死亡するに至った一件について「お詫び」文を公表した。問題があったのは、生協の食材宅配を行う「生活クラブ連合会」(東京都新宿区)が販売していたペットフード「犬・猫用ササミ姿干し 無塩」。製造はノースペットが手掛ける。
生活クラブ連合会の8月の発表などによれば、組合員から19年1月、「(同商品から)変な臭いがする」と苦情が来た。その後、68匹の犬や猫に嘔吐や下痢などの症状が出て、うち15匹の犬が死亡した。
検査の結果、商品からサルモネラ菌や大腸菌群が検出されるも、原料の鶏肉や工場、従業員から菌は見つからなかった。
ペットフードは食品衛生法の規制対象ではなく、通常は食品扱いされていない。生活クラブでも食品ではなく生活用品と位置付け、細菌基準はなかったが、「生活クラブ自主基準において、ペットフードも加工食品と同等レベルの微生物基準を設定する検討を早急にすすめます」としていた。こうした経緯について、J-CASTニュースは「ペットフードから『サルモネラ菌』、14匹死亡か 食品ではなく『生活用品』扱い」(8月22日配信)で報じていた。
牛干し肉商品でも
ノースペット側は9月3日、公式サイトで「ササミ姿干し製品」について、「ご家族の一員であるペットに死亡事例を含む甚大な健康被害を発生させてしまい、洵に申し訳なく、深くお詫び申し上げます」と謝罪文を掲載し、再発防止策を講じたと発表した。
同社担当者は取材に対し、商品が原因で健康被害が起きたとは断定できないという。ただ、ペットの治療にあたった複数の医師は「便・胃の検査や解剖をしていないのでサルモネラ菌が原因だとの診断書は書けないが、引き金になったのではないかと想像できる」との旨の説明を受けたという。死亡した犬の中には持病を持っていたり、老衰ぎみだったりした個体がいた。
商品からサルモネラ菌などが検出された原因はいまだ特定できていないが、「もともと存在していたサルモネラ菌が生き残っていたんじゃないか」(担当者)と、加熱処理が不十分だった可能性を示唆した。同社は一部の塊肉の中心温度しか測っていなかった。
ペットフード安全法では細菌などが死ぬ温度で加熱するよう規定しており、農水省の畜水産安全管理課は8月22日の取材に対し、「今回はこの規定を満たせていなかった可能性がある事例だと考えている」と話していた。
また、9月3日の「お詫び」文の中で、ノースペットは今回の件を受けて別の商品も検査したところ、牛干し肉商品でもサルモネラ菌が含まれていた可能性があることがわかったと報告した。念のため、検出された商品の製造日以降のものは出荷を停止し、公的機関に検査を依頼する。
担当者によると、これまで、同商品の購入者から健康被害は報告されていないため、過去にさかのぼっての調査は予定しておらず、また、販売先は明かせないという。
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)