政府がマイナンバーカードを活用し、消費者へのポイント還元政策を行う方針を決めた。
消費増税に合わせて2020年6月まで、中小店舗に限ったキャッシュレス決済によるポイント還元が行われる予定だが、その後の景気対策を見込んでいるという。カード普及との「一石二鳥」をもくろんでいるようだが、果たして上手くいくのだろうか。
キャッシュレスへの「前払い」に上乗せ
政府が19年9月3日に行った、行政のデジタル化を進める「デジタル・ガバメント閣僚会議」第5回では、「マイナポイント」を活用した消費活性化策が議題に上がった。首相官邸公式サイトの議事資料によると、マイナンバーとは別に、本人申請で付与できる「マイキーID」があり、そのIDで管理するのがマイナポイントだ。現状でも一部自治体では、マイキーIDに紐づけた「自治体ポイント」を付与している。前回会議(6月)までは、自治体ポイントの活用案も出ていたが、今回の資料を読む限り、それとマイナポイントは別の位置づけのようだ。
新たな構想では、マイキーIDを持つ人が、民間キャッシュレス決済へ一定金額を前払いした場合、国費による「マイナポイント」がプレミアム分として上乗せされる。民間決済の例には「〇〇ペイ」の文字があり、おそらくPayPayやLINE Pay、メルペイといったサービスを視野に入れているのだろう。利用シーンとしては、QRコード決済や、オンラインショップなど。20年7月以降の一定期間実施する計画だ。
プレミアム分がどの割合で付くのかは現状では不明ながら、報道各社は入金2万円に対して5000円分(25%)を上乗せする案が有力だとしている。もし「Pay」各社の還元キャンペーンと併用できるのなら、お得さはさらに増すだろう。
カード普及率は10%前半どまり
一方で、マイナンバーカードの前には、高い壁がそびえている。想定スケジュールでは20年7月末に3000~4000万枚を交付し、23年3月末までに「ほとんどの住民がカードを保有」することになっているが、現状の普及率は10%台前半(約1800万枚)にとどまる。まずは足元から、ということなのか、先日も公務員に対して、19年度中の取得目標を課したが、まだまだ先は長い。
カードには健康保険証の機能を20年度末から持たせ、健保組合などを通じて交付を促していくといった普及策が考えられている。お薬手帳機能が盛り込まれ、確定申告での医療費控除も簡単になるなどがメリットとして挙げられているが、いちいち役所へ出向く必要のあるカード発行には、やはり精神的なハードルが高い。また、やっとの思いで手に入れても、その後のマイキーID発行や、民間決済サービスへの紐づけなど、恩恵を得られるまでには、遠い道のりが待っている。
いくらポイントがもらえても、面倒くさければ使いたくない。もしくは、労力に見合った「手間賃」がないと、わざわざ発行する気が起きない――という人は多いだろう。上限額が青天井なら話は別だが、もし数万円レベルにとどまれば、普及の手助けにはならない可能性がありそうだ。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)