NHKから国民を守る党(N国)の丸山穂高衆院議員(35)が、北方領土や竹島について「戦争」発言を繰り返す中、菅義偉官房長官の記者会見での反応が割れている。
北方領土をめぐっては「誰が見たって不適切な発言」だと非難する一方で、竹島をめぐる発言では「コメントは差し控えたい」と沈黙を守った。韓国メディアでは、悪化する日韓関係が反映された結果だとの見方も出ている。
北方領土に続き竹島にも「戦争で取り返すしか...」
丸山氏は19年5月に北方領土へのビザなし交流に参加した際、国後島で訪問団の団長に対して
「団長は戦争でこの島を取り戻すことには賛成ですか? 反対ですか?」「戦争しないとどうしようもなくないですか?」
等と発言。竹島については、8月31日に、韓国国会議員の竹島上陸に日本政府が抗議したことを伝える記事を引用しながら、
「政府もまたまた遺憾砲と。竹島も本当に交渉で返ってくるんですかね?戦争で取り返すしかないんじゃないですか?」
などとツイートしていた。
いずれの発言も、実質的に日本の施政権が及んでいない領土について、現状を変えるためには戦争が必要だとの考えを示したものだが、政府の反応は大きく異なっている。
韓国メディア「黙認したのではとの観測も」
北方領土をめぐる「戦争発言」が官房長官会見で取り上げられたのは5月14日午後。丸山氏の発言についてロシア側から説明を求められた場合の対応を問われた菅氏は、
「政治家個人の発言ですから、誰が見たって不適切な発言ですから、政府として関与なんかしないでしょう。個人として責任を取るべき」
と切り捨てた。これに対して、竹島をめぐる丸山氏の発言に対する見解を問われた9月2日午前の会見では、
「個々の議員の発言について政府としてコメントは差し控えたい」
と述べるにとどめた。
この対応の差を、韓国メディアは相次いで報じている。通信社の「ニュース1」は、
「日本政府が事実上丸山氏の『独島(編注:竹島の韓国側の呼称)戦争も辞さない』(発言)を黙認したのではないかという観測も出ている」
と伝え、聯合ニュースは、丸山氏の発言に対する日本政府の反応が、日韓関係改善に向けた意欲を評価する上での試金石になりうるとの見方を伝えている。
「菅氏が丸山氏の似たような発言の中で、独島関連発言に対する批判に消極的なのは、唯一韓国に高圧的な姿勢の安倍晋三政権の外交姿勢を反映しているという指摘が出ている。これにより、丸山氏の独島妄言に対して、日本政府と政界がどのような対応をするかが、悪化の一途をたどる日韓関係を改善するために日本がそれだけ誠意を持っているかを判断する材料になる、という分析も出ている」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)