実行委員「ぜひ両方の会見を聞いて公平に記事書いてくれれば」
津田氏の会見には、そのあと会見予定の実行委・岡本有佳氏が報道側の席で参加しており、途中で司会から発言を促された。岡本氏は「なぜ(津田氏と)一緒に会見しないか。理由は2つあります」として会見を分けた背景を説明した。
「8月12日から、大村知事に展示再開のための協議の申し入れをしていますが、今現在までに実現していません。その中で、公式ルートと別の形で、津田さんと同じ場所でいきなり記者会見するのは控えたいというのがあります。
もうひとつは日本の主要メディアの報道をみると、大村知事や津田監督の主張が8~9割を占めていると感じます。私たち実行委員会は当事者の一人ですし、もちろん作家の方々も当事者です。そうした声が日本メディアで報じられていないので、今回は単独会見でそれぞれの立場からきっちり事実を話すために(会見を分けた)。ぜひ両方の会見を聞いて公平に記事書いてくれればと願っています」
直後に開かれた実行委の会見では、津田氏や大村知事への不満が次々に飛び出した。岡本氏は「大村知事と津田監督は開幕たった3日で『表現の不自由展・その後』の中止を決定しました。表現の自由への侵害であり、作家と表現の自由を守らなければならないというなら、作家と私たちに意見を聞いて悩みを共有すべきだったと思います」と主張。実行委はこれまで開催してきた展示会を通じ、職員への事前研修などが抗議への対応として重要であると学んできたと説明したが、「事前研修が実施されてないなど準備が十分でなかった」としてこう指摘した。
「安全対策にはたくさん言いたいことがあります。展示再開のためにできることはまだまだあると思っていますし、しなければならないと考えています。
大村知事と津田監督は中止の理由を『検閲ではなく安全の問題』と言っていますが、私はそう思っていません。作品を見せないようにしたことは表現の自由の侵害になると思います。また、作品を視察したうえで展示中止を申し入れた河村たかし・名古屋市長、補助金について精査するとした菅義偉官房長官の発言は、政治的圧力であり、表現の自由への侵害だと思います」
また「攻撃のターゲットとなった少女像は、戦争と性暴力のない、女性の人権と尊厳の回復を願う芸術作品です。こうした被害者の記憶、歴史的記憶を掲げるときに、今回『ジェンダー平等』をあげたあいちトリエンナーレはまず声をあげるべきだったと思います」と、芸術祭全体のテーマとも絡めてあいちトリエンナーレ側の対応を批判した。