韓国の与野党の国会議員6人が2019年8月31日、島根県の竹島(韓国名・独島)に上陸し、日本の輸出規制の強化を非難するパフォーマンスを展開した。輸出管理の問題に絡めて領土問題でも日本への批判を強める韓国側の姿勢が反映されたと言えそうだ。
竹島周辺では、ロシア空軍機が19年7月、韓国が主張する防空識別圏(ADIZ)と「領空」を侵犯したとして問題になったばかり。竹島周辺をADIZに指定しているのは韓国だけで、日本は指定していない。このADIZ指定の問題はたびたび指摘されており、改めて「日本の本気度が疑われる」という声も出ている。だが、過去には竹島をADIZに含めたとしても「何かができるということではない」という国会答弁もある。どういう意味なのか。
国民・玉木代表「日本の本気度が疑われる」
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は8月29日に行われた臨時閣議で、輸出管理の問題で改めて日本を非難したのに続いて、
「歴史を歪曲する日本政府の態度が被害者の傷と痛みを重ねている」
などと歴史問題にも言及。その直後に竹島の問題でも対日批判を展開した。
「日本の帝国主義の侵略の最初の犠牲になった独島を自らの領土とする、とんでもない主張も変わらない」
日本政府は竹島に関連する事案が起こるたびに韓国政府に抗議しているが、その効果は見えにくい。そんな中で、国民民主党の玉木雄一郎代表は9月1日未明、ツイッターで
「政府は、ただ遺憾と言うだけでなく、少なくとも、米国とも協議して、竹島上空を日本のADIZ(防空識別区)に組み込むべきだ」
と主張。竹島や北方領土がADIZに入っていない現状は「日本の本気度が疑われる」とした。
実はこの問題は、過去の国会審議でもたびたび提起されてきた。ADIZは、領空に近づく航空機が敵機かどうかを判別するために設けられた空域のことで、他国機が事前通告なく飛行すると、国籍不明機として緊急発進の対象になりうる。
日本のADIZは1969年に「防空識別圏における飛行要領に関する訓令」に基づいて制定。米軍が日本の防空や航空管制を行っていた際に定めた線引きを踏襲した。竹島を日本のADIZに加えるべきだとする議論について、2011年6月に行われた衆院・沖縄及び北方問題に関する特別委員会で、防衛省の高見沢将林・防衛政策局長(当時)が
「あくまでも防空識別を的確に行うためのもので、領土ないし領空といったものの限界や範囲を定めるものではない」
などと説明している。