ドラッグストア業界7位のココカラファイン(2018年度売上高4005億円)に対し、5位のマツモトキヨシホールディングス(HD、同5759億円)と6位のスギHD(同4884億円)が繰り広げた争奪戦は、マツキヨHDの勝利に終わった。この争いは、プライベートブランド(PB)商品と調剤のどちらを重視するかという構図だったが、ココカラはPB重視を選択した。統合すれば売上高1兆円規模の「メガドラッグ」として業界首位に躍り出る。両社の統合協議入りは業界再編の幕開けになるのか。
ココカラを巡っての争奪戦の経緯は、2019年4月26日にココカラとマツキヨが資本業務提携に向けて協議開始を発表して号砲が鳴った。6月1日に、ココカラはスギとも、経営統合に向けて協議開始すると発表し、当初は統合までは考えていなかったマツキヨも対抗して同5日に経営統合も含む協議に〝格上げ〟した。ココカラは2社の提案を検討する社外有識者による特別委員会を同10日に設置し、その議論を経て8月14日、マツキヨとの経営統合の協議開始を取締役会で決議した。
決め手はPB
マツキヨ勝利の決め手はPBだった。ココカラの特別委は、「店舗作業の効率性や、PB商品の開発で相乗効果が得られる可能性がある」と判断した。
マツキヨのPBとはどんなものか。基盤は2700万人のカード会員で、その情報を活用してPBの企画開発を進めている。2015年に投入し日用品「matsukiyo」は包装デザインを重視し、旧来の低価格路線からの転換に踏み出した。高品質・高機能をうたう化粧品・日用品の「アルジェラン」シリーズは累計販売個数が1000万を突破する看板ブランドに育った。ともすれば、PB=ナショナルブランド(NB)の低価格品というイメージを持たれがちだが、「品質」でNBと一線を画すPBを育てたわけだ。
PBの強みは、売上高構成で化粧品の大きさに現れる。マツキヨの2018年度の化粧品売上高は業界トップの2277億円に達し、売上高全体の約4割を占める。そして、PBはNBよりも利益率が高いので、集積への貢献は大。マツキヨの営業利益率は18年度に大手でトップの6.3%となっている。
こうしたマツキヨの高収益性がココカラを引きつけたのだ。
コンビニなどとの競争は激化
敗れたスギは薬局の本業である調剤の優位性を訴えた。スギは約3000人の薬剤師を雇い、店舗の約8割で調剤薬局を併設しており、患者の自宅に出向く在宅調剤にも力を入れてきた。ドラッグは、マツキヨに代表される若い女性を中心ターゲットとした化粧品など「ビューティー路線」、コスモス薬品(業界3位)やサンドラッグ(4位)に代表されるファミリー層を主ターゲットにした「食品路線」と、調剤に注力するスギなどの路線に大きく三分される。スギは、少子高齢化の進展で、将来性があるのは自分だという自負があった。値引き競争の激しい食品や日用品などに対し、処方箋を受け付ける調剤事業は公定価格だけに安定的に利益を上げられるのが強みだ。
実は、ココカラも調剤には力を入れてきた。スギにすれば、両社の調剤を合わせれば業界トップになり、強みをより強くして業界をリードするという目論見だったようだ。だが、ココカラの営業利益率は2018年度に3.2%と低迷しており、調剤に注力する以前に、収益改善を優先したとみられる。
日本チェーンドラッグストア協会の推計では、2018年度のドラッグストア業界の市場規模は、前年度比6.2%増の7兆2744億円で、00年度の約2兆6630億円から、20年弱で2.7倍に拡大している。だが、コンビニなどとの競争は激しさを増し、インバウンドにも陰りがみえる。コンビニ業界が3強に集約されてきたように、ドラッグチェーンも集約が進む可能性が高い。
合従連衡はどう展開してもおかしくない
今後の動きはどうなるのか。実は、マツキヨとスギが2018年末まで統合交渉をしていた。結局、経営の主導権を巡り折り合えなかったとされるが、合従連衡はどう展開してもおかしくないというのが業界の常識だ。
そこで注目されるのが大手スーパーのイオンだ。業界2位のウエルシアHDを子会社に持ち、1位のツルハHDにも13%出資する。スギはイオンとも因縁があり、2000年に資本・業務提携したが、06年に解消した。そのしこりが尾を引いているのかも含め、今後の業界再編がどう展開するのか、目が離せない。