「身内がカルトに入ったら...」 当事者17人の「反応」、調査論文が話題

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   カルト団体に巻き込まれた家族の葛藤を調査した論文が、「来たるべき日のために読んだ。とてもためになった」「ごく普通の家族の家族がカルトに巻き込まれていく、っていう認識から始めなくてはならない」などとSNS上で注目を集めている。

   論文では当事者17人にヒアリングし、カルトをめぐる家族の複雑な心境を明らかにした。

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計297時間の聞き取り

   タイトルは「"カルト"問題に直面した家族の心理的プロセスの研究 ― 曖昧な喪失に対する家族の反応 ―」。

   フリーランスの中西彩之氏と立正大の西田公昭教授(社会心理学)が共同執筆し、学会誌『日本応用心理学会』(2019年7月号)に掲載された。家族のメンバーが過去または現在、カルト団体に関与している17人に計297時間の聞き取り調査を行い、心の変化を12の段階で示した。

1.カルト関与した家族メンバーの兆候の見落とし
2.偶発的、事後報告的にカルト関与を知る
3.知識獲得によりカルト関与に危機感を持つ
4.早期脱会への希望的観測
5.当人の脱会のみに焦点を当てた対応
6.家族関係の悪化
7.早期脱会の困難さを実感してからの対応
8.団体活動の実践による当人、家族、他者を巻きこんだトラブルの発生
9.カルト問題の継続によって更に状況が悪化することへの不安
10.カルト問題解決の不確かさに翻弄される
11.カルト問題によるストレス症状
12.周囲や公共機関からのサポート

   西田氏が8月26日、ツイッターで「突然、大事な家族の誰かがカルトに入ったことを知ったとき、その家族に何が起きるのか、初めて本格的に実態に迫った心理学研究論文です」と紹介すると1000以上リツイートされ、話題を呼んだ。

ストレスでうつ病になる人も

   当事者の話をもとにした例(段階1~12への当てはめは編集部)では、外出理由やお金の使い道を偽るなど関与の兆候があり(1)、カバンの中から教祖の写真が見つかった(2)。団体について知っていたので危機感を持つも(3)、すぐに解決すると思っていた(4)。

   そこで団体の教義の矛盾や反社会的な活動について指摘し脱会を促すも(5)、マニュアルのような返しをされ、以降、口論が増えるように(6)。いつしか団体の話題に触れるのが怖くて避けるようになった(7)。そんな折、団体への寄付のために借金をし、活動に専念するため仕事まで辞めたことに気づく(8)。さらにはほかの人を団体に勧誘したり、反社会的な活動に参加したりしていることもわかり(9)、家族への愛情と怒りの板挟みになる(10)。

   ストレスからうつ病を患い(11)、これまで理解してもらえないだろうと周囲には相談できなかったが、意を決して警察など公共機関に打ち明けるも「家族で解決すべき問題」「信教の自由」と相手にされなかった――(12)。

   以上を踏まえ、論文では2つの気づきを挙げている。

「カルト問題は、当人のカルト関与を知った家族の初期対応が重要であり、家族は性急な脱会要請への衝動を抑え、当人との信頼関係を失わないコミュニケーションを維持する必要がある。なぜなら、本研究では、家族による"団体批判"を前面に出した脱会要請の繰り返しで家族関係が悪化し、カルト問題がより深刻化していたことが示唆されたからである」
「家族へのサポートは、家族のカルト問題に関する理解の促進、当人と家族の信頼関係の再構築、脱会可能性の曖昧さとの共存への支援に重点を置く必要がある。(中略)信頼関係の修復の試みを継続していても、当人のカルト関与が長期化している家族もおり、カルト問題は長期的視野で捉える必要がある(編注:一方で、社会のカルト問題への理解や支援体制がまだ十分ではないとも指摘する)」

論文はウェブで公開

   西田氏は8月28日、J-CASTニュースの取材に、ツイッターで紹介した論文は、教え子である中西氏の修士論文を雑誌用に書き直したものだと明かす。

   西田氏は研究方法や執筆の指導などを行い、「まったく現場を知らない大学院生がカルト問題を抱える家族たちに接近して、良好な関係を作り、辛い問題を抱えた人々からの吐露や色々と聞き出したのですから、きつかったろうと思います」と振り返る。

   論文は、日本応用心理学会のウェブサイトで公開されている。

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