暴走運転は、この「幸せ」を奪い去った 松永さんが語る真菜さん、莉子ちゃんと過ごした日々

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事故の朝、真菜さんが抱きついてきた

   事故が発生した4月19日の朝のこと。「ぼくはいつも後から起きるんです。先に真菜と莉子が起きていて、その後ぼくが起きてくるんですけど、真菜が、後にも先にもその日だけなんですけど、ぼくが寝ていたら真菜が走ってきて、寝ている僕に抱きついてきて。莉子が食事している時だったんです。『どうしたの』と聞いたら『何でもない』と。今となっては不思議だなと思うんですけど、だまってぼくにぎゅっとしてきて。そしたら莉子が、『お母さん』と呼んだから戻っていったんですけど、あの時のハグした感触を覚えています」。

   松永さんも起きて、一緒に食事をする。「いつも通りお見送りをしてくれて、莉子が『お尻ばいばい』と言って、お尻をふりふりしてばいばいしてくれる。『行ってきます』と言って。ぼくが目で見た最後の姿は、その2人の姿です」。

   昼休みは毎日、真菜さんとテレビ電話をしていた。「いつもは12時20分ぐらいに電話するんですけど、真菜からLINEで、『そろそろ自転車出さなきゃいけないから』って話をされて、すぐ昼休みの12時ぴったりに電話した。その(テレビ電話の)背景が南池袋公園だったので、『公園にいるの?』と聞いたら『そうだよ。もうちょいで自転車を出さなきゃいけないんだ』って。普段、あんまりそこに自転車で行かないんですよ。買い物がついでにあったから、そこに行ったみたいで。それで『気を付けて帰ってね』って言った後に電話を切った」。

   通話時間は、1分46秒。23分後、事故が起きた。

「警察から電話かかってきたのは2時ぐらい。頭が真っ白になって、そこから記憶が飛び飛びなんですよ。体の震えが止まらなくて。何かの間違いだろうと思って」

   スマートフォンを出してニュースを見ると、『女性と女児が心肺停止』などの情報が目に入る。「そんなわけないだろ。だって、さっき昼に電話したじゃん。さっきまで生きていたのに、死ぬわけないだろ」。14時34分、松永さんは真菜さんに「無事でいてくれマナりこ」とメッセージを送る。「あんまり記憶にないんですけど、何とか嘘であってほしい、間違いであってほしいという願いを込めて打ったんでしょうね。いつまでもたっても既読にならなくて。それがまた怖くて」。

真菜さんと事故直前に交わしたLINEのやり取り(遺族提供、編集部一部加工)
真菜さんと事故直前に交わしたLINEのやり取り(遺族提供、編集部一部加工)

   病院に到着後、2人は横たわっていた。「真菜は顔が傷だらけだし、莉子にいたっては見られる状況じゃなかった」。

   2人の告別式。棺桶は、それぞれ別々だった。「2人がちょっと2メートルぐらい離れているんですよ。3人で食事の時みたいに...、手つなぐことができなくて......。(棺桶の)蓋を閉めたくなくて。これが、終わったら2人に永久に触れないと思うと......。時間がきてしまって、2人の棺桶閉まって。そのまま火葬場に行って、2人が同時に火葬されて、骨になって戻ってきました。莉子なんて、ちっちゃいから骨が本当に少なくて............」。

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