横浜・山下ふ頭へのカジノ(IR=統合型リゾート)誘致をめぐり、反対派の急先鋒で「ハマのドン」こと、横浜港運協会の藤木幸夫会長(89)が怪気炎を上げた。
「ここは我々の聖地である」 「オレが命を張ってでも反対する」
2019年8月23日の記者会見では「ヨコハマ」の将来を憂う、昭和ひとケタ生まれの姿を見せた。
「泥を塗らせた人がいる」
恰幅のいい、89歳とは思えぬ頑強そうな体つきで、「べらんめぇ」調の話しぶり。
「きょうは、みなさんの意見が聞きたいんだ」
と場を和ませ、笑いをまじえながらも、しかし記者の名前を確認し、メガネの奥から鋭い視線を投げかける老練さが滲む。
とはいえ、記者会見は冒頭から、なにやら不穏だ。
藤木幸夫会長は「大きく顔に泥を塗られた」と林市長に不快感を示した。そのうえで、
「先月、ああしたい、こうしたいというお願いを紙に書いて正式にお出ししたが、その返事もいただいていない。その返事ぐらいくれよ、と言いたい矢先にこういうことになった。すぐに文句を言うのがふつうだが、文句を言う気が全然ない。なぜなら、泥を塗ったのは林市長だが、泥を塗らせた人がいるということはハッキリわかっている」
と話し、7月までは「誘致決定」を決めあぐねていた林市長に、突然誘致を表明させた「真」の敵の存在を明かした。
その「真」の敵を、藤木会長は「ハードパワー」と呼び、ここ数年「ハードパワー」の存在が顕在化しており、いまの日本社会の「空気」が太平洋戦争前の昭和14~16年と似ていると訴える。
当時、藤木さんは小学生。「子どもながらに、『なにかおかしい』と感じながら暮らしていた」と話し、現在も意見を言うのも憚られるような「空気」が蔓延して、不健全だという。
今回のカジノ誘致について、
「港の先輩たちがこの地で汗を流し血を流し死んでいった人たちがいっぱいいる。その方々がなにか言いたいだろうと思う。死んだ親父に『ヨコハマの将来をちゃんとしろよ』『博打場はやめろよ』と言わされていると感じている」
とも語った。