問題点は大きく分けて「3つ」
だが、時間がたつとともに、警戒感が広がり、7月18日閉幕した主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は各国中央銀行代表で構成する作業部会が10月までに規制の在り方に関する報告書をまとめるとした。直近でも、8月20日にはEU欧州委員会が競争法(独占禁止法)違反の疑いで調査を開始したと米ブルームバーグなどが報道、ポンペオ米国防長官も同じ20日のインタビューで、規制について言及した。
リブラの問題点について、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が7月の議会証言で「重大な懸念を抱えている」と発言した3点に集約できる。つまり、(1)個人情報保護、(2)マネーロンダリング(資金洗浄)、(3)金融システムへの影響――の3つだ。
第1は、利用者の個人情報が過去に大量流出したFBへの不信はもちろん、ビットコインが流出する(盗まれる)など仮想通貨全般の信頼性の問題だ。
第2に、リブラを介し反社会的組織やテロ組織に資金が流れれば社会の安全、世界的な安全保障を脅かす。仮想通貨は匿名性が高く、銀行送金では本人確認が厳しく行われるが、リブラが十分にチェックできるか、不安視される。
ただ、それ以上に心配なのが3つ目で、金融分野で各国の主権を脅かしかねない点に、各国当局が鋭い視線を向ける。
リブラの仕組み、ドルや円など各国の公定の通貨を裏付けとするということを、もう少し詳しく見てみよう。リブラをほしい人は決まった取引所で、ドルや円でリブラを買い、リブラの発行主体である「リブラ協会」は手元に入る通貨を分散投資する。米議会公聴会でFB側は「米ドル50%、ほかはユーロ、英ポンド、円など」というから、一種の通貨バスケットのようなイメージだ。具体的には各国債などの「高格付け」資産に投資し、その利子収入は発行・管理手数料に充てる。ビットコインなど既存仮想通貨は、こうした裏付け資産がないので、投機資金の動きで乱高下するが、リブラはその心配はないという。
だが、いくら信用力の高い公債中心に投資しても、価値が損なわれることはあり、そうなればリブラの価値も下がるというリスクからは逃れられない。