コミックマーケット96(2019年8月9日~12日)で話題を呼んだコスプレイヤーの中に、意外な形で時の人になった人がいた。
映画「男はつらいよ」の主人公・寅さんのコスプレイヤーを、撮影者が「元ネタがわからないけど格好いい」という感想を交えてツイッターに写真を投稿、それが「今の若い世代は寅さんを知らない!?」という驚きとともにネット上に広がった。
昭和の国民的映画の主人公に、令和の世でも扮し続ける理由は何か。J-CASTニュースは、「寅さん」コスプレイヤー本人に話を聞いた。
奇しくも渥美さん死去の年から
「男はつらいよ」の映画は1969年から1997年まで、特別編を含めた全49作が制作された。渥美清さんが演じた、トランクを片手に茶色のスーツと腹巻・雪駄姿で全国を旅する「寅さん」こと車寅次郎の風貌は昭和の日本人に親しまれたが、2010年代の日本ではさすがに縁遠い存在かもしれない。
寅さんのコスプレで注目されたその人は、名乗った名前もズバリ「寅さん」。寅さんのコスプレ歴は長く、1996年から始めたそうだ。
「その頃、24年ほど前、友人同士で寅さんのコスプレをやってみたいという話になり、私が以前から寅さんに似ていると言われていたので、(寅さんを)やってみないかと言われて乗り気になり、寅さんのような身近で親しみのあるキャラクターもいいなと思って始めました」
と寅さんは語る。
当時寅さんの映画はテレビで見て知っていて、96年の春頃から寅さんのコスプレを始めた。折しも渥美さんが96年8月に死去したが、この頃からコミックマーケットでも寅さんのコスプレで参加し、毎回できる限り毎日参加している。20年以上にわたってコミケで寅さんに扮してきたが、寅さんを知らない参加者に会うことはあっても、その反応がこれだけ広がる体験は初めてだと語る。
「『男はつらいよ』を地上波で放送する機会も減り、CSやBSでの放送が増えてきました。意外と知らない人も多く、知らない世代が現れても仕方ないかなと思いますが、こんな形で二重の反応で盛り上がったのは初めてです。知らない世代からも格好いいといわれたことにも驚いていますが、同時に名前を知らなくてもそう思ってくれたことがうれしいし、ありがたく思います」
と率直な感想を寅さんは語ってくれた。
そして、名前を知らないだけで驚かれる寅さんの偉大さを実感し、キャラクターを生み出した渥美さんへの尊敬の気持ちも新たにしたという。寅さん以前にもコスプレに興味はあったが、庶民的で意外なコスプレを参加者も面白がってくれたので、寅さんを続けるようになった。