韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を表明したことで、にわかに注目が集まっているのが、司法相候補の曹国(チョ・グク)氏をめぐるスキャンダルだ。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は2019年8月9日に曹氏を司法相候補に指名したが、直後に娘が名門・高麗大に不正入学したという疑惑が表面化。学歴を重んじる韓国だけに不正入学に対する世論の批判は厳しく、GSOMIA破棄で世論の目をそらそうとしたのではないか、という指摘が野党やメディアから出ている。
「曹国(チョ・グク)を救うために祖国(チョグク)の未来を危機に」
曹氏は1965年釜山生まれ。ソウル大教授を経て、文政権が発足した17年5月に青瓦台(大統領府)の民情首席秘書官に就任。19年7月に退任していた。司法相指名直後に表面化したのが曹氏の娘(28)をめぐる疑惑だ。韓国メディアによると、娘は高校時代に2週間にわたって大学の医学研究所でインターンに参加し、研究所の論文の筆頭筆者として名を連ねた。その論文をアピールして名門・高麗大に入学したが、大きく(1)高校生が大学の研究所の筆頭著者になれるわけがない。論文不正だ(2)その不正な論文で合格したのだから不正入学だ、という批判が噴出していた。
中央日報や京郷新聞によると、最大野党「自由韓国党」のナ・ギョンウォン院内代表は、GSOMIA破棄は曹氏のスキャンダルを隠すための「ムルタギ」(スキャンダルなどを水で薄めること)だと指摘し、
「曹国(チョ・グク)を救うために祖国(チョグク)の未来を危機に陥れる局面」
と非難した。
朝鮮日報も8月23日付の社説で、
「青瓦台が、このような衝撃的な無理をしたのは、曹国司法相候補者に対する世論が悪化する政局を転換しようとしたからではないのか。大事故を起こして、それを別の大事故で覆い隠そうとするのか。また、安全保障問題を利用することはあまりにも無責任である。国民は馬鹿ではない」
と指摘している。
青瓦台報道官「取ってつけた話」と一蹴
青瓦台のコ・ミンジョン報道官は8月23日の記者会見で、こういった指摘について「取ってつけた話」だと反論。GSOMIA破棄を通達する期限(8月24日)は以前から分かっていたことを説明しながら「2つの事柄がそのように関連付けられるのは非常に残念」と述べた。
曹氏はフェイスブックで、娘の論文不正や不正入学疑惑に反論する一方で、閣僚としての適格性を判断するために国会が行う聴聞会で事実関係を説明したいとしている。ただ、曹氏のスキャンダルをめぐって与野党の対立が激化しており、聴聞会のスケジュールは流動的だ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)