報道各社は2019年8月20日、京都アニメーション放火事件の犠牲者の身元をすべて公表するよう、京都府警に申し入れ書を提出した。
この動きを受け、SNS上では反発が広がり、反対署名まで立ち上がった。マスコミと世間との意識の乖離(かいり)がみられている。
匿名だと「事件の全体像が正確に伝わらない」
京アニの放火事故をめぐっては、8月21日現在、犠牲になった35人のうち10人の氏名が公表されている。残る25人は遺族の了承が得られておらず、府警は発表時期を慎重に検討している。
京アニ側は「警察及び報道に対し、本件に関する実名報道をお控えいただくよう、書面で申入れをしております」と公式サイトで説明し、「遭難した弊社社員の氏名等につきましては、ご家族・ご親族、ご遺族のご意向を最優先とさせていただきつつ、少なくともお弔いが終えられるまでの間は、弊社より公表する予定はございません」との姿勢を示す。
一方、京都府内の報道12社でつくる在洛新聞放送編集責任者会議は8月20日、事件発生から1か月以上たっても残りの25人の発表がなく、「事件の全体像が正確に伝わらない」と懸念を伝えた上で、「過去の事件に比べても極めて異例」として速やかな実名公表を求めたという。時事通信が報じた。
遺族や京アニの意向にそぐわない実名公表の要求に、世間は敏感に反応した。署名サイト「change.org」では「京都アニメーション犠牲者の身元公表を求めません」との反対署名が立ち上がり、わずか一日で9000筆以上集まっている(20時現在)。「一般人が被害者の実名を知らなければ、事件や事故の悲惨さが伝わらないのでしょうか。そんなことはないと思います」「マスコミの発表しなければいけないという使命感って何?そんなのエゴでしかない」「個人、遺族の意志を尊重するという至極当たり前のことを当たり前にしてほしい」と厳しい声が寄せられている。