大規模デモが続く香港をめぐり、住民のおよそ半数を「英国人」にすべきだとの議論が英国の国会議員から提起されている。香港が英国から中国に返還された1997年までは、香港人は希望すれば「英国海外市民(British National Overseas、BNO)」としてのパスポートを持つことができ、いまなおBNOパスポートを持つ人に英国本土の国籍を与えよう、という議論だ。
中国の武装警察が香港のデモ鎮圧を念頭に訓練を行うなど緊張が高まるなか、香港人の多くを英国が支援していることを示すことで、中国側をけん制する狙いだ。
「『1国2制度』が『1国1.5制度』に」と指摘
この議論を提起したのは、英下院外交委員会のトム・トゥーゲンハット委員長。2019年8月13日午後のツイートで、中国の武装警察が香港に隣接する広東省深?(シンセン)に展開し、暴徒鎮圧を目的にしたとみられる訓練を始めたことを「『1国2制度』が『1国1.5制度』になっている」と憂慮し、英国が検討すべき事柄を列挙した。そのうちのひとつが
「完全な市民権を香港の中国人(HK Chinese)に拡張すること。(香港が英国から中国に返還された)1997年にやっておくべきだったが、誤りは正すことが必要だ」
というものだ。
返還までは、希望する香港人は申請して登録すればBNOに登録できた。BNOは英国本土に永住できないなどの制約はあるが、ビザなしで行ける国の数が英国本土のパスポート並みに多いといった特徴がある。返還後の香港には中国の国籍法が適用され、香港在住の「民族的に」中国人である香港人は、中国国籍を持つとみなされている。ただし、返還前に登録していた人はBNOを維持することもできる。BNOを持たない香港人には、香港特別行政区(SAR)パスポートと呼ばれる、中国本土のパスポートとは別の種類のパスポートが発行される。
トゥーゲンハット氏のツイートには、赤い表紙のBNOパスポートと青い表紙のSARパスポートの画像がついている。ツイートでの「香港の中国人」は、BNOのことを指すとみられる。