北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が2019年8月19日付の紙面で、日本人拉致問題が「捏造」だとする主張を展開した。「拉致の可能性を排除できない」として800人以上いる特定失踪者だとされた人が相次いで国内で「発見」されたためだ。
「拉致問題」は「解決済み」だと主張してきた北朝鮮だが、そもそも問題が存在しなかったことを指す「捏造」という単語を使いながら主張をエスカレートさせている。
2019年だけで2人が「発見」
日本政府が認定した「拉致被害者」は、帰国できた5人を含めて17人。それ以外に「特定失踪者問題調査会」は約470人の失踪者を把握しているとしており、警察庁はこの470人を含め「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者」が現時点で881人いるとしている。
この「拉致の可能性を排除できない行方不明者」が相次いで「発見」されている。千葉県警が5月20日、1992年に国内で失踪した男性が19年4月に国内で発見されたと発表したのに続き、宮崎県警が8月7日、1974年に国内で失踪した男性が18年11月に発見されたと発表した。
労働新聞では、この2例を根拠に、日本人拉致問題そのものについて「根拠がない捏造だということを改めて実証している」と主張。多くの行方不明者がいる背景について、独自の主張を展開した。
「日本で行方不明者が増えている原因は反人民的であり、反動的な社会制度そのものにある。殺人と拉致、不倫背徳が氾濫する日本社会では、多くの人々が世界に背を向け行方不明者に転落している」
拉致問題の「ブーメラン化」まで主張
その上で、安倍政権が拉致問題を支持率の底上げに利用していると主張した。
「内外での危機に追いやられるたびに、『拉致問題』を挙げて政治的目的を達成しようとするのは、安倍一味の常套手段である」
「日本国内では、安倍の政治的人気を上げる『親孝行役』をしていた『拉致問題』が、むしろブーメラン化して首を締めている、という非難と嘲笑の声が出ている。安倍一味は、すでにその真相が間違いなく明らかになった『拉致問題』をいくら騒いでも世論を欺くことができないことを知るべきである」
労働新聞は5月27日付の記事でも、拉致問題について「荒唐無稽な詭弁であり、意地の悪い捏造説」と主張している。
拉致問題をめぐっては、北朝鮮側は、拉致被害者や行方不明者を含む「すべての日本人」の再調査を約束した14年の「ストックホルム合意」を反故にしたまま、「解決済み」だと主張し続けている。特定失踪者の「発見」事案が相次いだことで、「解決済み」から「捏造」と、態度をさらに硬化させている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)