毎年春・夏・冬の長期休暇シーズンになると、JRの「青春18きっぷ」を利用する旅行者が多く現れる。
2019年夏季は9月10日までが利用期間で、JR全線の普通列車が5日分乗り放題のきっぷだ。
とりわけ旅行好きの鉄道ファン、いわゆる乗り鉄を中心に根強い需要があるが、新幹線ではなく普通列車だけを長時間乗り継ぐ旅には「難関」と呼ばれる区間がいくつか存在する。その一つ、静岡エリアを移動する様々な知恵が、18きっぷユーザーの間で練られている。
なかには3両編成も...しばしばラッシュ発生
東海道本線の静岡エリア、おおむね熱海~豊橋間はほとんどが普通列車での運行で、「新快速」「特別快速」のような料金不要の速達列車はない。大動脈の東海道本線とはいえこの区間は乗り換えなしの直通列車でも3時間以上を要し、関東と関西を移動する18きっぷユーザーにとって「難関」として長らく立ちはだかっている。乗り鉄以外にも、東海道を格安で移動したいユーザーもいるため、シーズン中は地元の乗客と多くの18きっぷユーザーで、しばしばラッシュのような混雑が発生する。
さらに6両や5両、中には3両編成という短い列車もあるために、熱海などの始発駅では席取りが激しくなることもある。この区間のハードな移動を少しでも快適にするため、乗り鉄たちは経験をもとにいろいろな作戦を編み出した。
混雑する「直通列車」は避けるのも手
まずは「混雑する直通列車を避ける」というもの。日に数本ある豊橋・浜松と熱海を直通する列車には、当然乗客が殺到する。乗り換えが増えてもよいから、あえて直通列車を使わないで乗り継いでいく戦略がある。さらにその際に、興津・島田・掛川など中間の駅始発で長距離を走る列車をチェックして選べば、空いている確率が高い。
また、より快適な移動を保証する、乗り得な列車が少ないながらも走っている。朝夕に限って運転される「ホームライナー」である。沼津~静岡、静岡~浜松、沼津~浜松間で運転される本来は通勤・通学客のための列車だが、18きっぷでも乗車整理券320円を払うだけで必ず座って移動でき、しかも一部の駅にしか停まらず、特急型の373系電車を使用するので車内空間も快適とマニア注目の列車だ。とりわけ最も長い距離を走る、沼津18時31分発「ホームライナー浜松3号」(平日・土休日とも運行)は浜松まで走り、さらに浜松から普通列車となって豊橋まで向かうため、乗り得ずくめの列車となっている。これらの列車を見つけてプランを練るために、乗り換えアプリに頼らずあえて紙の時刻表にこだわる乗り鉄もいる。
他にも、「1駅間のみ運賃と特急料金を払い新幹線に乗る」「トイレがついている列車の運用を調べる」「ターミナルで途中下車し、ご当地グルメを味わって一息つく」といった工夫がマニアの間で共有されている。このような知恵を凝らすのも、18きっぷ愛好家にとっては格安旅行の楽しみの一つだろう。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)