歳出改革は進むか?
政府は、「成長実現」を前提に財政再建の見通しを語るのが常だが、そもそも、「成長実現」の想定が楽観的過ぎるとの批判は多い。第2次安倍政権発足後に実質2%を超える成長率を達成したのは2013年度だけ。むしろ、「ベースライン」が現在の経済状況が続くという想定で、2%に届かない年が続けば、目標達成時期の先送りを繰り返すことになる。
安倍首相は参院選中に、「10年間ぐらいの間は(消費税10%から)上げる必要はない」と発言。選挙後も「引き続きしっかりこの政策を進めていけば2025年にはPB黒字化も可能と言われている」と述べている。再増税しなくても目標を達成できるというわけだが、そのためには歳出の思い切った改革が必要になるはずだ。
だが、今回の試算に合わせて決めた2020年度予算編成の概算要求基準(7月31日閣議了解)は、歳出の上限額を7年連続で定めず、(1)高齢化の進行に伴う社会保障費の伸び(自然増)を5300億円程度とする、(2)公共事業などの「裁量的経費」の要求額を今年度当初予算より1割削る一方、削減額の3倍まで成長戦略に関係する施策の予算要求を認め、その総額4.4兆円を特別枠とする、(3)消費増税に関係する経済対策や、増収分で実施する事業は、通常の予算とは別枠として予算編成過程で検討する――など、歳出に思い切って切り込む雰囲気はない。8月末に締め切る各省庁の概算要求の総額は6年連続で100兆円を超える見通しで、仕上がりの当初予算案も、2019年度に続き100兆円の大台を超えるのが確実視されている。米中貿易摩擦の激化などで成長がさらに鈍れば、税収が落ち込み、赤字が拡大することになりまねない。