プラカードや校旗掲揚も
人見さんが高校野球に取り入れたのは校歌斉唱だけではない。開会式の際に校名が入ったプラカードで先導することや、校旗の掲揚を採用したとされる。国名が入ったプラカードでの先導、国旗掲揚は、いずれも五輪では恒例化されたお馴染みのもので、人見さんは五輪の開会式や表彰式にヒントを得て、高校野球に自身のアイデアを取り入れた。
第6回選抜中等学校野球大会は、出場16校と、当然ながら現在の大会よりも規模が小さく、中等学校野球の頂点を決めるひとつの大会に過ぎなかった。その大会に国際的な視野を持った人見さんならではの新たな「感覚」が用いられた。おそらく当時はかなり斬新なものだっただろう。1929年3月31日付けの東京日日新聞夕刊(東京版)では、開会式の模様が写真入りで報じられている。
一昔前のように、甲子園に出場しても校歌を聞くことなく甲子園を去るということはなくなった。高校球児にとって甲子園で演奏される校歌は人生の思い出になるだろうし、勝利しての校歌斉唱は格別だろう。炎天下の中、今年もまた地方を勝ち抜いた球児が深紅の大優勝旗を目指して熱戦を繰り広げている。最後に校歌を歌うのはどの高校か。高校野球ファンの楽しみは、しばらく続く。
(J-CASTニュース編集部 木村直樹)