「優勝でしょ。笑い事じゃなくて、本気ですよ!」。ラグビー元日本代表の五郎丸歩選手が2019年8月16日、東京都内で行われたイベントに登壇した。
五郎丸選手は2015年W杯イングランド大会で、FB(フルバック)として出場。キックを蹴る前に人差し指を立てて両手を合わせるルーティン「五郎丸ポーズ」が、大きな話題となった。その前回大会の立役者は、キッパリと言い切った。
「信は力なり」という気持ちを抱くからこそ
五郎丸選手は、女優の山崎紘菜さんと一緒にステージへ上がった。そのイベント後のインタビュー時だった。取材陣から「(日本代表の)成績的には、どこを目指してほしいか?」と聞かれた五郎丸選手は「優勝でしょ」と言い切った。周囲は若干、ザワザワしたが、五郎丸選手は、
「笑い事じゃなくて、本気ですよ!」
と、報道陣に対して語気を強めた。
五郎丸選手には「信は力なり」という強い気持ちがある。2015年大会で日本代表が南ア代表に大逆転勝利を収めた時、最後までピッチ上に立っていた。同試合は「世紀の大番狂わせ」「スポーツ史に残る大金星」と世界中から称賛された。「ハリー・ポッター」シリーズの作者として知られるJ・K・ローリング氏も「こんな奇跡は、小説でも書けない」と、メディアで絶賛したほどだ。
五郎丸選手は、今年6月に都内で行われたイベントでも、
「だって、あの時(南ア戦)、日本が勝つなんて、世界中の誰も思わなかったでしょ? 大切なのは『信じること』。だから皆さん、代表を信じて応援しましょう!」
と、大勢の観衆の前で力を込めて話している。
「新聞を信じるか、オレを信じるか、『信は力なり』や!」
実は、この「信は力なり」という言葉は、五郎丸選手の母校である早稲田大学ラグビー部監督で日本代表監督も務めた故・大西鐡之祐先生(1916~1995)の言葉なのだ。当時の早大ラグビー部は受験を経て来た選手が大半で、体格的にも他大に劣っていた。そこで迎えた早明戦。マスコミの大半は「明治大が圧倒的に有利」と書き立てた。
しかし、大西先生は違った。決戦を前に選手に対して発された言葉が、
「新聞を信じるか、オレを信じるか、『信は力なり』や!」
という名言だった。結果、早大は明大を破り、大勝利を収めた...という歴史がある。
1986年生まれの五郎丸選手は当然、大西先生と会ったことはない。しかし「信は力なり」という言葉は、早大ラグビー部、そして日本ラグビー界に脈々と受け継がれている。その信念から発した言葉が「優勝するのは日本」という言葉だったのだろう。
「ケガだけはしないでくれ!」
日本代表は今夏、フィジー、トンガ、アメリカと各国代表を次々と撃破してきた。
「調子は、かなりいいと思います。いい方向に仕上がっていますし。でも、いい時っていうのは、チームはうまくいきますけど、何か悪いことが起こった時に崩れてしまう...っていうのも、チームとしてあるんで。そういうリスクマネジメントをリーダー陣がやっていければ、すばらしい大会になると思います」
そんな日本代表は、8月29日の「最終メンバー(31人)発表」を経て、9月6日に因縁の南ア戦(埼玉・熊谷ラグビー場)を迎える。そして同20日、W杯開幕戦(東京スタジアム)でロシアと相まみえる。
「日本代表として戦っている時にはワクワクしていましたけど、(現在)1歩引いて見ている立場としては『ケガだけはしないでくれ!』って思いますね。やっている側は全然、なんとも感じないんですけれどね」
4年前の自身を思い出すかのように、代表選手たちへエールを送った。
(J-CASTニュース編集部 山田大介)