知事、監督、展示会...「責任」は誰にあったのか あいちトリエンナーレ「危機管理」への疑問符

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   国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で少女像展示などを中止した問題で、芸術監督でジャーナリストの津田大介氏が、SNSを通じて、お詫びと報告を行った。

   津田氏は、事前検閲になるため、展示会側の判断に任せたなどと説明した。こうした手法は組織マネジメントとしてどうなのか、専門家に話を聞いた。

  • 津田大介氏が長文の説明文をネット公開
    津田大介氏が長文の説明文をネット公開
  • 津田大介氏が長文の説明文をネット公開

作品展示の有無は、「展示会の実行委が決定権」

   芸術祭の展示会の1つ「表現の不自由展・その後」は、慰安婦を象徴する「平和の少女像」などに脅迫を含めたクレームが殺到し、わずか3日間で中止になった。これに対し、津田氏は2019年8月15日夜、混乱を招いた責任を重く受け止めているとして、長文の説明文をネット上で公開した。

   それによると、津田氏は、2月と3月の打ち合わせでは、少女像は様々な懸念が予想され、実現が難しいと不自由展の実行委側に伝えた。しかし、実行委側は、それは検閲に当たるなどと拒否したという。これに対し、津田氏は、現場のリスクよりも表現の自由を選んだジャーナリストの立場から、事前検閲になると考えて実行委側の判断を優先させることにした。

   作品展示の有無は、「実行委が決定権を持っていました」と津田氏は説明する。

   そして、1か月ほど前から対策を考えていたが、その時点での展示内容告知は、警備上のリスクになるとして、展示の発表は直前になった。また、大量の抗議電話を予想して回線を増強するなどしたが、混乱を防げなかったという。

   津田氏は、批判は甘んじて受けるとしながらも、表現の自由を考えることは公的な芸術祭にふさわしいとして、不自由展に意味があったと主張。内部から辞任を求める声があったが、「最後まで現場監督としてトリエンナーレを無事終えることが自身の責任の取り方」だとした。さらに、今回のことで「表現が安全に行えない社会となっていることが内外に示されてしまった」と嘆いている。

「自ら少女像を選んだ形であり、責任逃れになる」

   この津田氏の説明については、ツイッターやネット掲示板などで様々な意見が書き込まれている。

   津田氏の主張に理解を示し、励ます声も次々に寄せられた。その一方、「何のための総監督なのか」といった疑問の声も上がった。和田政宗参議院議員(自民党)は、こうした意見を受けて、「津田大介氏は記者会見や公開での議論を」とブログに書いた。

   また、芸術祭実行委会長の大村秀章愛知県知事が、行政不介入の立場から津田氏に展示責任があるとしたことから、お互い現場に責任転嫁しているのではないかとの意見も出ていた。

   危機管理に詳しい広報コンサルタントの石川慶子さんは、今回の問題で第一義的に責任があるのは大村知事だと取材に話した。

「国民の税金が使われている以上、芸術祭には自由にできない部分があると思います。結果として、対応に多額のお金をかけ、展示会が中止になったのですから、芸術監督は解任すべきだったのでは。監督は、事実上県に雇われており、権限のある知事は、任命した責任を取る必要もあるはずですよ」

   芸術監督としての津田氏についても、こう言う。

「結果として、自ら少女像を選んだ形になっており、展示会側の決定だというのは責任逃れだと思います。中止になったことの責任はあり、その時点で辞めるべきだったのでは。監督としてのギャラも、受け取るべきなのか疑問に思いますね。民間企業なら、『部下がやった』というのは言ってはいけないNGワードです。上司は、責任を持たなければならないですから」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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