ボクシングのWBO世界バンタム級暫定王者ジョンリル・カシメロ(29)=フィリピン=が2019年8月24日、フィリピンで同王座の初防衛戦に臨む。対戦相手は同級10位セサール・ラミレス(31)=メキシコ=。カシメロは防衛戦を前に地元メディアを通じて「すべてのベルトを一つにまとめ上げるつもりだ」とバンタム級の王座統一を宣言。WBA、IBF王者・井上尚弥(26)=大橋=へ対抗心を燃やした。
今年4月、カシメロはWBO同級暫定王座決定戦で勝利し、暫定王者となった。正規王者ゾラニ・テテ(31)=南アフリカ=が肩の負傷により長期間、防衛戦を行うことができないため暫定王座が設けられ、カシメロは同王座の初防衛戦後にテテとの王座統一戦が義務付けられている。
強打のパンチャーだが精神面もタフ
暫定王者ながらカシメロは、ライトフライ級、フライ級に続く世界3階級制覇を達成。フィリピン人ボクサーとしては、マニー・パッキャオ(40)、ノニト・ドネア(36)、ドニー・ニエテス(37)に次ぐ史上4人目の快挙である。世界的にみて、実力、知名度は「レジェンド」らに遠く及ばないが、右の強打は世界トップを一撃で倒す威力を秘める。
カシメロのレコードは27勝(18KO)4敗で、軽量級において高いKO率を誇る。身長163センチで上背はなく、荒々しいファイトが特徴のファイターだ。右フックは大振りながらも、これまで世界トップをキャンバスに沈めてきた。これに加えて左右アッパーも特徴的で、勝負所で思い切りよくアッパーを突き上げる。
強打のパンチャーである一方で精神面でのタフさを持ち合わせる。プロデビュー後、しばらくは母国フィリピンを主戦場としてきたが、世界のトップシーンに躍り出ると、戦いの場を海外に求め敵地での世界戦も多く経験している。2016年9月には英国に乗り込み、元世界トップアマで現WBC世界フライ級王者チャーリー・エドワーズ(26)=英国=を10回TKOで下している。
ガードが甘く、耐久性は未知数...
敵地においてもいかんなく実力を発揮するタフ王者だが、ガードが甘く、試合中まともに被弾するシーンがみられる。元来、ライトフライ級の選手で、スーパーフライ級を飛ばしてバンタム級に上げてきただけに耐久性は未知数だ。ただ、井上の正確無比かつ強力なパンチが直撃すれば、おそらく立ってはいられないだろう。
今後、井上が王座統一路線で行くならば、当然、WBO王座は標的となる。WBCは実弟・拓真(23)=大橋=が暫定王者に君臨し、年内にも正規王者との統一戦が開催される見込みで、拓真が勝利すれば残る王座はWBOのみとなる。WBCの王座統一戦の結果次第で展開は変わってくるが、近い将来、WBO王者との統一戦が実現する可能性は低くはないだろう。
カシメロが「モンスター」に挑戦するには、まず暫定王座を防衛し、その次にテテの当座統一戦に勝利することが絶対条件となる。テテもまた井上との対戦を熱望しており、WBOの王座統一戦はいわば井上への挑戦権をかけた戦いになる。当の井上は11月7日にドネアとのWBSS決勝戦を控えており、その戦いぶりに注目が集まっている。