天皇陛下「おことば」、上皇さまから受け継ぐ思いと変化 保阪正康氏の見方は

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「おことば」に込められた思いを読む

   J-CASTニュースで「保阪正康の『不可視の視点』 明治維新150年でふり返る近代日本」を連載中のノンフィクション作家・保阪正康さんは、上皇さまと天皇陛下では「おことば」の用語が微妙に使い分けられているとする一方で、「戦後の国民の努力を讃える心情」は共通しているとみる。

「戦没者追悼式の天皇の『おことば』には、二つの意味があるように思う。その第一は、天皇家は8月15日の追悼式の受け止め方をきちんと定められているという事実である。第二は、そうは言ってもそれぞれの天皇の太平洋戦争への向き合い方は異なっているために、用いる用語は微妙に使い分けられている。今年のおことばと昨年の上皇陛下のおことばはほとんど同じである。このことは上皇、そして天皇との間に、かつての戦争で亡くなった戦死者を悼むという気持ち、戦争の傷跡を克服して、『我が国の平和と繁栄』を築き上げた戦後の国民の努力を讃える心情が共通していることを示している。私たちは改めてそのことをくみ取るべきだと思う。同時に上皇陛下は、戦争が終わった時には11歳であり、戦争の悲惨さを少年の目で確かめられている。現天皇は、戦争が終わって15年後のお生まれである。直接には戦争を知らない世代であり、それが第二の点としての指摘である」

   さらに、今回の「おことば」の特徴として、戦後生まれの天皇に代替わりしたことで、「同時代史から歴史への段階に移った」ことを挙げた。

「今回のおことばの中の、3番目の文にある『ここに過去を顧み、深い反省の上に立って』との表現は反省という歴史的な事実の上に、戦争の惨禍を繰り返されぬように願うと続いている。これは昨年の『深い反省とともに』とは若干の違いがあり、反省を随伴してといった次元からの変化である。つまり同時代史から歴史への段階に移ったことが、今回のおことばの最大の特徴である」

   天皇陛下の「おことば」全文は次のとおり。

「本日、『戦没者を追悼し平和を祈念する日』に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。
終戦以来74年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。
戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、ここに過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」

   今回の式典には天皇皇后両陛下、安倍晋三首相、97歳から4歳までの遺族ら約7000人が参列し、日中戦争と第2次世界大戦で犠牲になった約310万人を追悼した。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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