「死ぬか出るか」 入管ハンストの男性2人、会見で語った心境

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   茨城県牛久市の東日本入国管理センターに長期収容されていた際、ハンガーストライキをしていた外国籍の2人が2019年8月13日、都内で記者会見を開いた。

   2人は身柄を解く仮放免をされたが、東京出入国在留管理局(以下、東京入管)に出頭を命じられている。会見で「怖い」「ごはんも食べられない」などと心境を語った。

涙を流すイラン男性のサファリさん(2019年8月13日編集部撮影)
涙を流すイラン男性のサファリさん(2019年8月13日編集部撮影)

「2週間だけどちゃんと帰ってきてね」

   会見を開いた2人はいずれも、東日本入国管理センターなど出入国在留管理庁の施設に3年超収容されていた。

   イラン国籍のサファリ・ディマン・ヘイダーさん(50)は、テヘラン出身。91年に来日した。16年6月8日に東京入管に収容されたのち、10月7日に東日本入国管理センターに移された。サファリさんは「仮放免をお願いしたが出してもらえず、先が見えない」とハンガーストライキを行った理由を明かす。ハンスト前の6月6日ごろは86キロだった体重は一時、15キロも減少。仮放免された7月31日には、75キロだった。体重は戻っておらず、「逆流性食道炎」、「十二指腸潰瘍の疑い」、「不眠症」などの診断が出ている。

   仮放免された31日、サファリさんは職員に「2週間だけどちゃんと帰ってきてね。逃げないでね」などと言われ、8月14日には入管側から出頭を命じられているという。サファリさんは「もちろん行きます。逃げるつもりもないが、怖くて夜もあまり眠れない」と心境を明かしつつも、涙を流した。仮放免の延長を求めて9日、国を相手に提訴した。

薬めぐって口論、「手首ひねられた」

   トルコ国籍でクルド人のデニズさん(40)も会見に同席していた。2007年に来日後、08年に日本人女性と出会い、11年に結婚。在留資格を持っておらず、16年5月15日から東京入国管理局収容場に収容され、17年2月2日に東日本入国管理センターに移された。難民認定申請は数回繰り返している。収容中には自殺未遂を4回した。

   2019年1月18日、収容所内で、長期収容で蓄積されたストレスのため、担当職員に向精神薬を渡してほしいと要請。職員は、デニズさんが1カ月半前に服用を中断した薬が残っているとして、薬を渡さなかった。薬をめぐって職員と口論になり、10~15人の職員に部屋へ入られた。そして、職員から手首をひねられたという。右手の親指でこめかみやあごの下を突き上げられたり、手錠がかけられた両腕を上に締め上げられたりした。デニズさんはハンガーストライキで、体重が74キロから63キロにまで減った。

職員から暴行を受けたと訴えるデニズさん
職員から暴行を受けたと訴えるデニズさん(2019年8月13日編集部撮影)

   デニズさんは、ハンガーストライキをした理由について、「死ぬか出るか。裏でやるしかない」と語っていた。8月2日に仮放免されたが、「全然、怖くて寝られない。奥さんも私のこの状態を見たら楽しくない。ごはんも食べられない」と窮状を語った。16日に東京入管側に出頭を命じられている。

   デニズさんは収容所で、職員から暴行を受けたにもかかわらず、同センターの所長が必要な救済をしなかったなどとして、国を相手にした国家賠償請求訴訟を8月10日、東京地裁に起こした。

「苦しめて自ら帰国するようにしている可能性もある政策は恐ろしい」

   入管の収容所などをめぐっては、被収容者の長期収容が問題視されている。長年、入管関係に携わってきた大橋毅弁護士は「東日本入国管理センターでは、3年を超えている人たちは珍しくない状態で、かつて経験したことのないような異常な事態。それだけの長期間、不適切な扱いを受け続けることは、本人たちにとって大変尊厳を傷つけられる経験になっております。大変、絶望的な気持ちになる。その上2年3年捕まって、いつ出られるかわからない」と指摘する。

   被収容者の間で、ハンガーストライキの動きが増えていることにも言及。「従来、1年たっても仮放免されない状況の中でも、収容をなるべく短くしてくれということと、処遇を改善してくれということでハンガーストライキが起きたことは何回かあり、処遇に関しての話し合いで改善や収束はあった」としつつも、「今回(起きているハンガーストライキの状況)は死の危険を顧みない。大変悲惨に思っています」と語った。大橋弁護士は「私たち弁護士や支援者の皆さんも決してハンガーストライキを勧めたりはしていないし、体が心配なのでやめてほしいと言っている人の方がおそらく多いと思うが、今回の悲壮な状況に対しては、気持ちはよくわかると言わざるを得ない」と複雑な心境を明らかにした。

   今年6月、長崎県の大村入国管理センターに収容されていたナイジェリア男性が死亡。男性はハンガーストライキを行っていたという。東日本入国管理センターをめぐっては、ハンガーストライキをして仮放免された人たちを2週間で再収容した対応に批判が集まった。大橋弁護士は、「苦しめて自ら帰国するようにしている可能性もある政策は恐ろしい」と警鐘を鳴らしていた。

(J-CASTニュース編集部 田中美知生)

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