米国のトランプ大統領が2019年8月9日にニューヨーク州で行われた資金集めパーティーで、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長について「友人」だと持ち上げる一方で、神風特攻隊について「操縦士は酔っていたかクスリをやっていたのか」とやゆし、韓国の防衛費について「彼らが払わなければならない」と応分の負担を求める考えを示した。
米国の同盟国であるはずの日本や韓国について否定的な発言を繰り返す一方で、かつてはテロ支援国家に指定されていた北朝鮮を持ち上げるという「逆転現象」が起こっている。
日本語風のなまりを「真似」しながら
トランプ氏の発言はニューヨーク・ポスト紙が報じた。総じて日韓をやゆするような発言だ。トランプ氏はパーティーの中で、安倍晋三首相と貿易交渉について会話したことを、日本語風のなまりをつけながら紹介したという。トランプ氏は安倍氏との友情や、父親が神風特攻隊の操縦士だった(外相などを歴任した安倍晋太郎氏。海軍滋賀航空隊に予備生徒として入隊し、特攻隊を志願したことが知られている)ことに感銘を受けたことなどに言及。特攻隊をめぐる安倍氏との会話を紹介した。トランプ氏にとって特攻隊は特異な存在だったようで、安倍氏に「神風特攻隊の操縦士は酔っていたのか、それともクスリをやっていたのか」と疑問をぶつけ、「違う、国を愛していただけだ」と答えたという。
トランプ氏は安倍氏とのやり取りを振り返りながら、パーティーの聴衆に
「国への愛だけで、片道分のガソリンしか入っていない飛行機で鉄の船に突っ込むことを想像してみてほしい」
と語りかけたという。
「13セントは本当に重要」の意味
韓国に関する発言は、費用負担に関するものが中心だ。トランプ氏は、自らの幼少期、不動産開発に携わった父親と一緒に家賃を集金した時のエピソードを交えながら、
「ブルックリンの賃貸アパートから114ドル13セントを集金するよりも、韓国から10億ドルを得る方が簡単だった。これは本当だ。13セントは本当に重要だった」
などと発言。10億ドルよりも13セントの方が集めるのに苦労したと言いたげだ。
さらに、韓国はテレビの輸出で有名で、経済も繁栄していることを指摘し、
「なぜ我々が彼らの防衛費を払っているのか。彼らが払わなければならない」
などと主張。「文氏の英語のなまりをまねながら、文氏がトランプ氏との厳しい交渉に屈する様子を説明した」という。
正恩氏の親書は「その大半がばかげた高価な軍事演習への苦情」
一方、北朝鮮の非核化をめぐる交渉の進展が見えない中でも、金正恩氏については「べた褒め」だ。トランプ氏は正恩氏から親書を受け取ったことを明かしながら、
「我々は友人だ。彼は自分と会うときしか笑わないそうだ」
「もし自分が大統領になっていなければ、北朝鮮とは大戦争になっていただろう」
などと話し、自らの成果をアピールした。
トランプ氏は8月10日、米韓合同軍事演習が終了次第、できるだけ早く交渉を再開したい意向を正恩氏が親書の中で示したことをツイッターで明らかにしている。ツイートでは、米韓合同軍事演習への批判と3回目の米朝首脳会談の意欲をつづっている。改めて非核化の意欲も示しているが、日韓と歩調が合うかは不透明だ。
「(親書は)長い手紙で、その大半がばかげた高価な軍事演習への苦情だった。短距離ミサイルの発射については少しお詫びがあり、発射は軍事演習が終われば止まるそうだ。そう遠くない未来に金正恩氏に会うことを楽しみにしている。北朝鮮から核がなくなれば、世界で最も成功する国の一つになるだろう」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)