日本国内のガソリンスタンド(GS)の数は2018年度末時点で3万70カ所となり、ピークだった1994年度末の6万421カ所から24年連続で減少した。
ハイブリッドカーの普及など自動車の燃費向上でガソリンの需要が長期的に減少していることに加え、値引き競争や後継者不足などでGS業界は疲弊している。自治体の中にGSが一つもない町村は全国で10町村(2018年3月末時点、同庁調べ)あるなど、インフラとしてのGSの存続は社会問題になっている。
価格競争が「収益環境の悪化」招くおそれ
資源エネルギー庁の統計によると、全国のGSは2018年度中に125カ所新設されたが、802カ所が廃止となり、合計で677カ所減って3万70カ所となった。マイナス幅は1997年度に1352カ所と4桁になり、19年連続で1000カ所台の減少が続いたが、2016年度866カ所、2017年度720カ所、2018年度677カ所と、近年はマイナス幅が少なくなっている。
帝国データバンクが2018年9月時点でGSを経営する8581社を抽出して分析したところ、2017年度の売上高の合計は前年度比7.2%増の8兆8660億円となり、3年ぶりに増加に転じた。 GSの売上高はリーマン・シヨックの影響を受けた2009年度に前年度比17.5%減と大きく落ち込んだものの、2010年度から2014年度にかけては5年連続で増加。2014年度の売上高は10兆2471億円と、過去10年間でのピークをつけた。
このためGSの倒産件数は2008年度の65件をピークに2017年度は30件に半減するなど、近年は落ち着いてきている。とはいえ、レギュラーガソリンの店頭価格は高値で推移しており、消費者の「買い控え」を助長している。帝国データバンクによると「価格競争の激化でGSは収益環境の悪化を招く恐れがある。特に小規模企業ではGS同士の競争激化の中、(コストの)販売価格への転嫁が進まず、収益改善に至らないケースもみられる」という。
後継者不在も廃業の要因に
全国石油協会によると、2018年6月末現在でGSを経営する全国9000社を無作為抽出して調べたところ、営業利益で赤字の企業は全体の38.5%を占めた。回答企業の97.5%が中小企業で、資本金1000万円以下で従業員数50人以下の比率は6.4%を占めた。
今後のGSの経営方針については、回答企業の7割が「継続する」と答えたが、「廃業を考えている」が11.8%、「規模縮小を考えている」も4.0%あった。廃業検討の理由は「後継者の不在」が41.0%で最多。「施設の老朽化」が37.4%、「販売量の減少」が31.5%で続いた。
帝国データバンクは「今後は人件費の高騰も重なり、GSの経営環境が一層厳しくなることが想定される。GSの動向は過疎地におけるインフラ機能の観点からも重要で、今後も注視していく必要がある」と話している。
確かに、首都圏など都心の幹線沿いでは不便を感じないGSだが、ひとたび地方の「人里離れた温泉」などにドライブに出かけると、GS探しに苦労するようになった。資源エネルギー庁などからなる「SS(サービスステーション=ガソリンスタンド)過疎地対策協議会」は、GSが3カ所以下の自治体を「過疎地」と位置付けるが、1カ所しかない自治体は全国に79町村、2カ所しかない自治体は103市町村もある(2018年3月末時点、資源エネルギー庁調べ)。
首都圏でも東京都清瀬市はGS2カ所の「過疎地」となっており、今後、社会インフラとしても、GSの在り方が議論になりそうだ。