FT「フォード撤退」説が浮き彫りにする、中国の自動車市場の現状

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   英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が、「米フォード・モーターが、中国から昨年撤退した日本のスズキに続きかねないという懸念は依然として根強い」と伝えた。

   世界最大の自動車市場ながら、米国との貿易摩擦もあって中国の18年新車販売台数は28年ぶりの前年比マイナスに。今年も2年連続で前年割れの公算が大きい。市場環境が大幅に悪化する中で伝えられた「フォード中国撤退」説が現実となれば、内外に一層大きな衝撃が広がる。

  • 駐車場の空きスペースが目立つ北京郊外のフォード・ディーラー店
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  • 挽回の切り札の期待がかかる、中国向けデザインの「エスケープ」新モデル
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工場稼働率わずか11%

   中国の自動車関係者や経済人たちも大いに注目した記事は、2019年7月28日付の「中国自動車市場縮小で膨らむ外資勢の将来への不安」。フォードと合弁関係にある大手国有企業「長安汽車」のデータを基に、「フォードの中国工場では今年上半期の稼働率が11%に過ぎなかった」などと伝え、撤退の憶測に言及した。データの確認や撤退の可能性について、フォード側はFTに「コメントすることを拒否した」という。

   フォードは、工業都市・重慶を本拠とする長安と2001年に合弁生産を開始。「長安福特」として、重慶や浙江省杭州、黒龍江省ハルビンにある7つの工場で、完成車や、エンジン、主要部品を生産している(「福特」はフォードの漢字表記だ)。販売台数のピークは16年の約96万台。だが17年には約83万台に落ち込み、18年には約38万台となった。今年1~4月の販売も前年同期比69%と、回復傾向は一向に見られず、中国メディアも「長安福特の惨状」と伝えていた。FTの報道はこうした「惨状」を国際的に伝えた形だ。

   中国の自動車市場の変調は米国との摩擦が激しくなった18年から始まった。対米関係の先行き不透明感、株価下落による資産価格減少に伴う消費マインドの低下などが大きな要因としてあげられる。確かにそれらもあるだろうが、私は、習近平指導部が進める自動車産業の構造改革という要因も大きいと見る。ひとことでいえばエコカー推進。国の後押しでエコカーが着実に普及していくなら、いま急いでガソリン車を買ったり買い替えたりする必要はないじゃないか。社会にそんな気分も広がっているように思える。そして自動車政策を担当する工業情報化省幹部も公言していることだが、これだけ大量の車が何年も売れ続けた結果、車が欲しい層にはほぼ行き渡ってしまっているのが中国の現状なのだ。

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