「決勝を待ちきれない」
この試合でドネアが参考となったとすれば、井上へのプレスのかけ方だけではなかろうか。168センチのロドリゲスとドネアは同じ身長で、攻撃的なスタイルも似ている。だが、ロドリゲスはこの試合で井上に対して仕掛けることさえ出来なかった。逆に初回でロドリゲスのパンチを見切った井上は2回に積極的に仕掛け、79秒の間に計3度のダウンを奪い、あっけないほどの幕切れとなった。
WBSSに出場するために7年ぶりにバンタム級に下げたドネア。スーパーバンタム級、フェザー級では判定までもつれ込む試合が多く見られたが、「適性」とされるバンタム級ではその破壊力は今なお健在だ。36歳という年齢から全盛期に比べてスピードが落ちたとの指摘もあるが、もともとパンチの当てカンが抜群で、カウンターのうまいボクサーだけに、必殺の左フック、アッパーは脅威となる。
ドネアが一発に頼って畳みかけようとしてくれば、勝負は早いランドで決する可能性も十分あるだろう。井上はロドリゲス戦で見せたように、ドネアのパンチを早々に見切り、一気に勝負に出る展開も考えられる。いずれにせよ、一撃必殺のパンチを誇る「モンスター」VS「レジェンド」は、判定までもつれ込むことはなさそうだ。
「決勝を待ちきれない」。WBSSを通じてはやる気持ちを隠さなかった井上。いまだ底を見せない無敗の「モンスター」が11月7日、新たな伝説を作る。