「門外漢・部外者」だからやりたかったこととは
その後も津田氏は「特にこだわりたいテーマ」として、「分断/差別/ジェンダー」に加え、「表現の自由/検閲」をあげる。引き合いに出したのは、美術家・会田誠氏が18年4~6月に京都造形芸術大学(東京外苑キャンパス)で公開講座を行ったところ、受講者の女性が19年2月、大学側を相手取って東京地裁に提訴した一件。性的内容を描いた絵画を数多く用いるなどした講義により、環境型セクハラにあったとして女性は慰謝料を請求していた。会田氏は当時、ツイッターで「寝耳に水でした」「その夜のトークは僕の通常運転だったことは確かです」と心境を明かしている。
津田氏は番組でこの会田氏の投稿をスクリーンに映すと、「この問題はこれからの美術業界でも絶対に切り離せない。良い・悪いじゃなくて。そこで『表現の自由と検閲』という問題が出てくる」とし、次のように話した。
「結構あれが深刻だなと思うのは、今まで、見た人が不快になるかもしれないような表現というのは一応美術館がゾーニングで対応してきた、あるいは、ああいうレクチャー形式なら最初に注意喚起することで対応してきた。だけど、それでも予想を超えるようなことで入っていくなり、あるいは大丈夫だと思って入っていって傷ついた時、傷ついたという事実がある時に、どう合意形成を図れるか、調整できるかは考えないといけない」
津田氏は、自身を「美術業界の人間ではない」としている。その自身が芸術監督として同芸術祭に携わることについて、番組では、
「基本的に今回のトリエンナーレは、門外漢がやった、部外者がやったということで基本スルーするというのは、美術業界からの話として何となく聞こえてくる。だけど、スルーできなくさせることはたぶんできる。美術業界の外のメソッドで。それで少しずつ変わっていけば、種くらいまける」
とも述べている。