日産を襲うゴーン「負の遺産」 大リストラで「希望」は残るか

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   カルロス・ゴーン前会長が去り、筆頭株主でフランス自動車大手のルノーからの人事介入を受けながらも新体制によるスタートを切った日産自動車。ゴーン時代の拡大路線は世界各地で弊害を起こして収益の悪化は止まらず、2019年7月25日に発表した4~6月期の連結営業利益は、1091億円だった前年同期から99%減少して、わずか16億円だけだった。「カリスマ経営者」が残した「パンドラの箱」が開き、外からは見えにくかったさまざまな問題が飛び出してきたのだ。

   「不採算事業により厳しい選択をしていく」。横浜市の日産本社で記者会見を開いた西川広人・社長兼最高経営責任者(CEO)は、4~6月期決算の発表に合わせて、全世界で1万2500人の人員を削減し、生産能力を1割縮小する構造改革策を明らかにした。人員削減は5月の時点で4800人と打ち出していたが、それを全従業員数の約1割に相当する規模に拡大する。米国やメキシコ、インドなど全世界の14拠点で閉鎖も含めた生産能力の縮小を断行して、日本国内でも栃木県と福岡県の拠点で期間工計880人を採用抑制によって減らす。

  • ゴーン前会長の路線の弊害が指摘されている
    ゴーン前会長の路線の弊害が指摘されている
  • ゴーン前会長の路線の弊害が指摘されている

収益悪化の震源地は米国

   収益悪化の震源地は米国だ。世界有数の自動車市場の米国で短期間にシェアを奪おうと販売奨励金を販売店につぎ込み、積極的な値引き販売を展開した。その結果、一時的には販売台数は増えたものの、日産の車は「安物」という印象が定着してブランド価値が低下した。これを食い止めようと販売奨励金を縮小したら、今度は販売台数は急速に落ち込み、悪循環に陥ってしまった。また、ゴーン前会長の思い入れが強かった新興国戦略によって生産能力を増強していたインドなどで思うように販売が伸びず、過剰となった生産体制が収益を悪化させている。

   商品戦略も方針転回せざるを得ない。不採算商品は打ち切り、2022年度までに全体の車種を1割削減する。その一方で、電動化車両など20車種を新たに投入して、縮小しながらも競争力を高める目標を掲げた。ガソリンエンジンで発電して、その電気でモーターを動かして前進するシステム「e-POWER」は消費者に支持されており、搭載する車種を増やしている。こうした新たな商品を創出するための研究開発投資は22年度までに10%増やす。

車種は減らしても...

   こうした構造改革策がうまく機能すれば、生産体制を縮小しても2018年度に69%だった稼働率を22年度には86%まで上昇させて効率化を図り、車種は減らしても魅力的な商品をそろえて、18年度に約550万台だった全世界の販売台数を22年度に約600万台に増やせると目論む。結果として売上高も約13兆円から約14兆5000億円に増える皮算用だ。もっとも、「100年に一度の変革期」を迎えている自動車業界で、その変革をリードするようなヒット商品を生み出しながらも、リストラを進めることは決して容易ではなく、「ゴーン後」の経営陣の舵取りは困難を極める。

   ギリシャ神話では、開いた「パンドラの箱」からあらゆる災いが飛び出した後、最後に希望が残ったとされる。果たして日産は希望を見いだせるだろうか。

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