国内での低迷が続く中、海外に活路求める企業たち
さて、日本企業による近年の海外企業買収では、武田薬品工業による欧州医薬品大手「シャイアー」(約6.2兆円)や、ソフトバンクグループによる英半導体設計大手「ARMホールディングス」(約3.3兆円)などがあり、今回の買収はこれらに続く規模になる。
これだけの買収の原資はどうか。アサヒGHDは今回、新株発行などで2000億円程度を調達するほか、一部を資本とみなされるハイブリッド債も2000億円程度発行、残りの資金は銀行借り入れや社債で賄う方針だ。これにより、株数はおよそ8%増える計算で、市場では、株式の希薄化への懸念が出て、買収発表(7月19日)後、最初の取引となった週明け22日のアサヒGHDの株価は一時、前週末比449円(9%)安の4589円と、2カ月ぶりの安値をつけた。発表前の16日の年初来高値5115円からは10.3%安く、その後も4600~4700円台で推移している。
一方で市場にも、収益への貢献への期待はある。アサヒGHDの2018年12月期の売上高2兆1200億円のうち海外事業が約3割を占め、営業利益の5割弱を海外事業で稼いでおり、今回の買収で、さらに収益を押し上げると見込んでいる。
ビールの国内市場は少子高齢化などに伴って低迷し、大手のビール類の課税出荷数量は2018年まで14年連続で前年割れ。しかも、利幅が少ない第3のビールが4割を占めて利益をあげにくい構造が定着する中、海外に活路を求めるのは当然のことだ。
ただ、海外事業は明暗が分かれている。サントリーHDのビーム買収ではウイスキーの販路を世界に広げるのに貢献し、業績を拡大した。一方、キリンHDが2011年に約3000億円で買収したブラジル事業は、景気減速や他社との競争激化で業績不振に陥り、1100億円の損失を計上して売却を余儀なくされた。
アサヒGHDが豪州で十分な収益を上げられなければ、重い負債を抱え続けることになる。巨額買収は果たして吉と出るか、凶と出るか。