記録よりも記憶に残る浪速のジョー
パイオニアの原田氏と同じく、日本国内で絶大の人気を誇ったのは辰吉氏だろう。世界王座2度の返り咲き、そして1994年、薬師寺保栄氏とのWBC世界バンタム級王座統一戦。薬師寺戦のテレビ視聴率は関東地方で39.4%の驚異的な数字を記録し、当時の辰吉人気を大いに物語っている。波乱万丈のバックボーンを持つ辰吉氏は、20勝(14KO)7敗1分の戦績以上のインパクトを残し、記録よりも記憶に残るボクサーだった。
記録といえば、長谷川穂積氏と山中慎介氏だろう。長谷川氏はWBC世界バンタム級王座を5年間にわたって守り続け、10度の防衛に成功した。WBO世界バンタム級王者フェルナンド・モンティエル(メキシコ)との事実上の王座統一戦に敗れて王座を失ったが、その後、見事にカムバックを果たし、スーパーバンタム級とフェザー級を制して世界3階級制覇を達成した。
その強打から「神の左」の異名を取った山中氏の活躍は記憶に新しい。サウスポースタイルから繰り出される左は、破壊力抜群で世界ランカーを一発で仕留めてきた。具志堅用高氏の持つ、13度の世界王座防衛記録まであと一歩のところまで迫ったが、13度目の防衛戦で「問題児」ルイス・ネリ(24)=メキシコ=に敗れた。リターンマッチはネリの悪質な体重超過の影響もあり、本来の力を発揮できず2回TKO負けし王座返り咲きはならなかった。