東京・代々木に建つ廃ビル「代々木会館」の解体工事が2019年8月1日から始まった。
このビルは2019年7月19日から公開中のアニメ映画「天気の子」(新海誠監督)に登場し、「聖地」となってからわずか2週間で解体が始まる。
「傷だらけの天使」の舞台にも
代々木会館は1969年に建設され、中国書の専門書店「東豊書店」やパチンコ店・ビリヤード店などが入居していた。1974年にはドラマ「傷だらけの天使」で主人公コンビの木暮修(演:萩原健一さん)と乾亨(演:水谷豊さん)が住むビルとして、撮影にも使われた。
その猥雑な外観から、香港のそれになぞらえて「代々木の九龍城」とも呼ばれていたが、高度経済成長期の様式が残る雑居ビルとしてひっそりと一部の建築マニアに注目される程度で、2019年6月までにテナントは退去し、解体を待つばかりのはずだった。
ところが7月19日に「天気の子」が公開されると、再度聖地として脚光を浴び始める。劇中でカギを握る「神社」がこのビルの屋上にあるという設定で、代々木会館と神社はクライマックスでも重要な役割を果たす。
「天気の子」は公開以来2週連続で週末観客動員1位を記録し、7月29日時点で興行収入40億円を突破するなど、新海監督の前作「君の名は。」に劣らない好調ぶりを維持している。緻密な風景描写に定評がある新海監督の作品であることも相まって、映画公開後は「聖地巡礼」に訪れる多くのファンが、代々木会館にカメラを向けるようになった。
しかし8月1日から建物の解体工事が本格的に始まっている。8月2日現在はまだ内部の資材の搬出にとどまって外観をとどめているが、遠くないうちにビル自体の取り壊しも始まると推測される。
現地の様子は
筆者は2日午前、現地を訪れた。最高気温35度の猛暑の中、学生と思われる若者や女性が連れ立ってカメラを向けたりする様子が見られたが、現地は代々木駅から目と鼻の先。車が行きかう中で時折建物を撮影しようとする人が現れる程度で、思ったよりひっそりとしていた。
「天気の子」公式サイトでは、劇中に登場する建物への聖地巡礼について、「近隣住人の方々への配慮、及び節度のある行動、マナーに十分心掛けていただきますようお願い申し上げます」と呼び掛けている。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)