「ジェンダー炎上」をテーマにした当連載では、これまで4回に渡って、有識者に加えて、SNSで拡散させたユーザーや広告主などの当事者に話を聞いてきた。最終回では、もうひとつの当事者である、広告制作サイドが、どう向き合っているのかに焦点を当てる。
そもそもどんな流れで広告が作られているのか。そして、「炎上」せずに世間に受け入れられるために、どのような策を講じているのか。電通で30年以上クリエーティブに携わり、現在は「ブランドア」代表の藤島淳さんに話を伺った。
藤島さんは1980年に電通入社。コピーライターを経て、クリエーティブ・ディレクターとなり、自動車会社から飲料会社まで、日本を代表する企業を担当してきた。2014年に退職すると、同年にブランドアを設立。ブランディングやコミュニケーション・デザインなどを手掛ける一方で、上智大学で広告論の非常勤講師も務めている。
(聞き手・構成/J-CASTニュース編集部 城戸譲)
広告ができるまで
――まず一般的な、広告出稿までの流れを教えてください。
通常は、まずクライアントが広告会社に、対象商品、ターゲットやメディア、トーンなどをオリエンテーションします。その後は、日本の広告会社ですと通常、クリエーティブ・ディレクターの下に、コピーライターと、デザインを担当するアートディレクター、CMプランナーの3人がチームになって、営業担当と密に連絡を取りながら制作します。
――チーム内の男女比や、世代構成はどうなっていますか?
それは広告会社の男女比に、ほぼ比例しています。やっぱり女性の心を動かすためには、女性からの視点も必要なので。女性のクリエイターは年々増えてます。いまどのくらいの割合ですかね。電通でも男性6:女性4とかでしょうか。化粧品など商品によっては、女性だけでチームを組む場合もあります。クリエーティブや市場調査のチームも、女性のトップが多くなっています。
――メンバーが固まったら、プレゼンテーションの準備に入るわけですね。
社内で10案くらいできたうち、だいたい2、3案をクライアントにお持ちして、プレゼンテーションさせていただきます。だいたい「A案にB案をトッピングしてよ」みたいな調整は入ってくるんですけれど、信頼関係が太くなると、こちらがすすめた案を採用していただくこともあります。
ただ、大きなお金が動く案件だと、クライアント側も宣伝部の一存で決められなかったりとか、営業部とか他部署との調整で時間がかかったりして、A~C案が全滅になって、新たにもう一回持っていくこともありますね。案が決まると、いよいよ制作に入ります。
――クライアントから調整を求められたとき、広告会社は受け入れるケースが多いのでしょうか?
ケースバイケースですね。例えば、黒いスーツがいいと思っているのに、クライアントから「ちょっと派手にしたい。赤にしてよ」と言われて、「派手はわかるけど、ちょっと赤まで行くとな」ということはありますね。一見(いちげん)のクライアントさんとは、探りながら信頼関係を作ることもあります。