「魔が差した」「ごまかせるのではと...」 ベテラン編集者は、なぜ「架空インタビュー」に手を染めたのか

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   新幹線などで配布しているJR東日本の広報誌で、過去のインタビュー記事を無断改変して使い回す不正が発覚し、その内容に驚きの声が上がっている。

   結果として、広報誌は休刊するまでになった。なぜ不正を防げなかったのか、JRなど関係者に話を聞いた。

  • 改変に使われた2013 年3月号の記事(写真は、JR東日本提供)
    改変に使われた2013 年3月号の記事(写真は、JR東日本提供)
  • 2019年6月号の記事は、捏造だった(写真は、JR東日本提供)
    2019年6月号の記事は、捏造だった(写真は、JR東日本提供)
  • 改変に使われた2013 年3月号の記事(写真は、JR東日本提供)
  • 2019年6月号の記事は、捏造だった(写真は、JR東日本提供)

教授と似たような偽名使い、顔写真も一部加工

   「これはひどい」「実にお粗末」「恥ずかし過ぎる」...。広報誌「JR EAST」2019年6月号の改変内容が各メディアに報じられると、コメント欄などにはこんな書き込みが相次いだ。

   この号では、2013 年3月号に載った早大大学院の浦田秀次郎教授(国際関係学)のインタビュー記事を改変しており、似たような架空の名前「国際経済学者 浦野正次」になっていた。また、別カットの顔写真が使われ、目元や表情を一部加工していた。

   記事内容も、自ら調べたデータなどを付け足すなど勝手な修正を一部で行っていた。タイトルは、「インフラ輸出の条件」だったのが、「『質の高いインフラ』の海外展開」になっていた。

   JR東日本は7月29日、「重要なお知らせ」として広報誌の不正についてサイト上にお詫び文を載せた。

   そこでは、「発行側と編集制作側のチェック機能が正常に行われなかった」とJR側の反省もつづり、「浦田教授の名誉を著しく棄損し、多大なご迷惑をおかけした」などと謝罪した。不正を重く受け止め、「JR EAST」は7月号で休刊とすることも明らかにした。発行部数は、約2万4000部だった。

   JR東日本の広報室が30日、J-CASTニュースの取材に答えたところによると、今回の不正は、委託先の編集プロダクション「ケイ・オフィス」の編集担当者が関与していた。

「10年ほども担当のベテランなので、まさかと」

   JRやケイ・オフィスによると、6月号の企画会議では、当初は浦田教授とは別の人にインタビューする予定になった。

   ところが、調整が難航したため、急きょ5月中旬に浦田教授に「インフラの海外展開」のテーマでインタビューを依頼した。その後、下旬になって、浦田教授から「現在の専門分野と異なり、このテーマには取り込んでいない」と断りの連絡が入った。そのときには、締め切りが迫っており、誌面の穴を開けるわけにはいかないと、編集担当者が無断で過去記事を改変した。

   校正の段階で、浦田教授の本名ではないことに確認を求めると、この担当者は、「教授がペンネームでの出稿を希望している」と説明したという。広報誌は、インタビューした人に無料配布しており、浦田教授から「自分の写真ではないか」と指摘があって不正が分かった。

   ケイ・オフィスでは、掲載原稿を全員で見るチェック体制を取っていたというが、今回は、担当者が原稿を見せなかったと代表が取材に説明した。

「10年ほども担当のベテランなので、まさかと思いました。広報誌の責任者でもあったので、チェックしきれなかった甘さがあったと反省しています」

   本人は、「魔が差した」と話し、「誰も気づかなければ、ごまかせるのではと考えた」という。この社員は、その後に解雇された。

   JR東日本の広報室では、「企画変更の可能性もあるのに、スケジュールが短かったとの反省はあります。ペンネームのことが出たときに、浦田教授に直接確認せずに使ったのも問題点だと考えています」と話した。

   編集担当者の過去の記事306本について調べてもらったところ、同様な不正は確認できなかったとしている。

   浦田秀次郎教授は30日、早大の広報課を通して、「今回の件については、JRが対応していますので、コメントする立場ではありません」と取材に答えた。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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