東京都立神代植物公園(調布市)の「大温室」で、数年に一度しか開花せず、高さ最大2メートルを超える「ショクダイオオコンニャク」が開き、そして垂れた。開花してからわずか2日ほど。2019年7月29日午前中の出来事だった。
生臭く、スルメイカのような悪臭放つ花
「付属体(ふぞくたい)が倒れました」と2019年7月29日8時過ぎに「都立神代植物公園 園長の採れたて情報」の広報係りがツイッター上に投稿した。花は肉が腐ったような強烈な悪臭を放つことから「死体花」、またその大きさから「お化け花」と呼ばれることもあるらしく、「まだ例の匂いを放っています」と同時に投稿している。同アカウントは成長の記録を報告しているが、2日前の27日午前に開花の様子も投稿している。わずか2日間に垂れたのだ。
垂れたのは、インドネシア・スマトラ島原産のサトイモ科コンニャク属の植物「ショクダイオオコンニャク」だ。大きいものでは高さ3メートルを超え「世界最大級の花」と呼ばれている。名の通り、燭台(しょくだい)のような花を「数年」に一度開花させる。特徴的なのは開花してから数日しか持たないことだ。
実際に神代植物公園へ足を運んだところ、園サービスセンターの広報普及係の飯村芳弘さんと、土方千鶴さんが7月29日、「大温室」へ案内してくれた。
園内は「ばら園」「つつじ園」「うめ園」など植物ごとに30ブロックに分けられ、約4800種類、10万本・株の樹木が植えられている。「ショクダイオオコンニャク」は、バナナやマンゴーカカオといった熱帯果実などを管理する「大温室」にいた。花は確かに垂れている。特別に近寄らせてもらい嗅いでみると「スルメイカのような臭い」がした。その場にいた小さな男の子は「生臭い」と顔をしかめていた。
その異臭を放つ「ショクダイオオコンニャク」には不思議な成長サイクルがあるという。
開花時点で約2メートル20センチ
まず球茎(きゅうけい)というコンニャクイモが発芽する。すると「葉芽(はめ)」が出てくる。イモが大きくなるまで栄養成長を繰り返し、大きく葉が伸びる。最大5メートル近く成長し、枯れる。このサイクルを繰り返すと、栄養が球茎に貯まり、大きくなっていく。そうするとイモから「葉芽」ではなく、「花芽(はなめ)」がでてくると飯村さんはいう。
神代植物公園には「ショクダイオオコンニャク」の成長記録がある。2019年5月20日には球茎の重さは33キロだった。そして6月15日に発芽し、この時点ではまだ「葉芽」か「花芽」かがわからなかったが、後に「花芽」と確認されたという。24日には高さ16センチ。29日には30センチ、7月8日には67センチとなった。ぐいぐいと伸び、11日には81センチとなり、この時点で「仏炎苞(ぶつえんほう)」という蕾を包むような葉がでてくる。同時に、悪臭を放つ「付属体(ふぞくたい)」という大きな棒のようなものが見えてくる。14日には100センチ、26日には2メートルを超え、27日開花時点で約2メートル20センチの大きさとなった。
そして29日8時、わずか2日で「あっという間に」垂れた。飯村さんは垂れても「臭いはキツイが、花は独創的な美しさを魅せている」と語る。
垂れた後、根元を切って、また伸びるの繰り返し
垂れた後は、根元から切り、球茎に戻すという。そしてまた、葉芽が成長し、枯れ、球茎を成長させ、いつか花芽が生え、再び開花する。
今回で3回目の開花となったこの個体は2011年に1回目の開花をむかえ、4年後の15年9月に高さ1メートル37センチを記録し、2回目の開花をした。3年10カ月ぶりに開花した今回は、前回よりも約1メートル高く成長し、2メートル20センチを記録した。次に咲くのはいつなのか聞くと、「次に咲くかどうかはわからない、そのまま腐るかも」。
「ショクダイオオコンニャク」の成長サイクルがいつ終わるか未定だそうで、とりあえず成長をみまもるらしい。
ちなみに既に垂れてしまったが、8月4日までの展示を予定しているという。しかし「暑さで悪臭を放つかもしれないため、早めに撤去するかもしれない」と帰り際に話してくれた。なお園内には、ショクダイオオコンニャクの個体がもうひとつあり、現在「葉芽」の状態だが、いつ花開くかはわからないという。
(J-CASTニュース編集部 井上祐亮)