東京メトロ東西線の早稲田駅で「珍事」があったとしてインターネット上で注目されている。電車は駅に停車したのに、扉が開かないまま出発してしまったというのだ。
運営する東京地下鉄(東京都台東区)は公式サイト上でトラブル発生を謝罪し、当時の状況を説明。改めて基本動作を徹底するとしているが、なぜ開扉していないことに気付かなかったのか。
ツイッターでは「なかなか珍しい案件」
東京地下鉄の2019年7月26日の発表によると、事が起きたのは同日6時46分ごろ。三鷹駅(JR)行きの東西線電車が早稲田駅に到着する時、ホームへの進入速度が高いと判断した運転士は、非常ブレーキを操作して急停車した。所定の停車位置に停まり、自動でホームドアが開扉したが、車掌が車両ドアの開扉操作を失念し、急停車のお詫びについて車内放送した。
「車内放送に気を取られた」という車掌は、車両ドアが開扉しているものと思い込んでいた。そのまま発車メロディを鳴らし、開いていないのに車両ドアの閉扉操作をし、ホームドアも閉扉のうえ、発車させてしまった。車両ドアが開かなかったために乗降できなかった利用客が申し出をしたことで、トラブルが発覚。「全ての乗務員に対して、改めて基本動作の指導、徹底を行い、再発防止に努めます」としている。
ツイッター上では「珍事だ」「なかなか珍しい案件」「車掌さんは気が動転し過ぎて車両の赤ランプもスルーしちゃったのか」など、あまり聞かないトラブルに注目する声があがっている。
同社広報担当は29日、J-CASTニュースの取材に、「複数の対応している中で、車両扉も開けたと勘違いしてしまった」と当時の状況を詳しく説明する。車両ドアの開閉扉操作は、ワンマンタイプであれば運転士が行うが、車掌も同乗していれば車掌が行う。今回は発表文のとおり車掌が乗っている車両だったが、運転手が非常ブレーキによる急停止をしたことで混乱が生じた。
「車掌はまずお客様にお詫びを申し上げないといけないということで、車内放送をしました。一方、ホームドアは列車が停止することで自動開扉します。ホームドアが開いたことで、車両ドアも開いたものと勘違いしてしまいました」
車掌、運転士ともに気付かず、駅係員も...
車掌は普段、駅停車時は列車の最後方からホームを見渡すが、今回は車内放送をしたため、車両ドアの開扉を確認していなかった。運転士も、非常ブレーキによる急停止措置をとったことを早稲田駅停車中に指令所に報告するため車内にいた。そのため、車掌はホームの状況を確認しきれず、ホームドアの開扉と車両ドアの開扉を混同してしまったという。
では駅係員は、というと、そもそも今回のトラブル発生時はホームに駅係員が配置されていない時間帯だった。早稲田駅では朝の通勤時間帯のうち、利用客数が多くなる8時~9時30分の間のみ駅係員をホームに置いている。発表文によると、トラブルがあった列車の乗車率は約20%(約300人)で、早稲田駅で乗車できなかった人数は約7人、降車できなかったと申し出があった人数は5人だった。
広報担当は「今回の件を機に当該時間に駅係員を配置することは検討しておりません。車掌の基本動作ができなかったことが原因と考えています」と話す。ここで言う車掌の基本動作とは、車両ドアの開閉操作だ。ホームドアが自動開扉すると表示灯が点灯し、車掌はこれを確認して、車両ドアを手動で開閉扉する。車両ドアを開き、車体についている車側灯が点灯するのを確認するまでが開扉作業の一連の動作だという。
東京メトロで駅に停車しながら車両ドアが開扉せずに発車した前回の例は、約5年前の2014年8月という。広報は「車掌・運転士の基本動作を徹底していきます」と話している。
(29日20時30分追記:指摘を受けて記事の内容を一部修正しました。)
(J-CASTニュース編集部 青木正典)