元徴用工らへの賠償を命じる判決や、韓国への「ホワイト国」解除をめぐる問題で、日韓関係が悪化する中、北朝鮮が日米韓の間にくさびを打ち込もうとしている。
日韓関係の悪化を受けて、日韓が2016年に結んだ軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すべきだとの議論が韓国国内で出ている。これに乗じる形で北朝鮮の宣伝サイトも「まだ破棄されずに今まで存在していたこと自体が異常」などと主張している。米国はGSOMIAが地域の平和と安定を維持するための「重要な手段」だとして「完全に支持する」としており、仮に韓国で破棄論が強まれば、北朝鮮の非核化をめぐる動きにも影響しそうだ。
青瓦台安保室長「状況によって再検討できる」発言が波紋
GSOMIAは16年11月に日韓が署名・発効。有効期限は1年で、期限の90日前(8月24日)までにどちらか一方が終了の意志を伝えない限り、自動更新される。日韓関係の悪化を受け、韓国の一部市民団体や労働組合から破棄論が出ていた。これに加えて、大統領府(青瓦台)の鄭義溶(チョン・ウィヨン)安保室長が19年7月18日に「状況によって再検討できる」と発言し、波紋を広げていた。
こういった動きを受け、北朝鮮の宣伝機関「祖国平和統一委員会」が運営するウェブサイト「わが民族同士」は7月28日付で「民心は親日売国協定破棄を要求している」と題する記事を掲載し、破棄論が出ることは「極めて当然」だと主張。GSOMIAを
「(韓国前大統領の)朴槿恵(パク・クネ)逆賊一味と安倍一味の犯罪的共謀・結託の産物として同族間の不信と対決をあおって、日本の軍国主義復活と朝鮮半島再侵略の足場を用意した売国協定であり、戦争協定」
だとした上で、
「存在し続けることは、朝鮮半島と地域の情勢安定を望む全同胞と国際社会への愚弄であり、挑戦である」
「まだ破棄されずに今まで存在していたこと自体が異常」
などとした。