ラグビー日本代表が2019年7月27日、フィジー代表に34―21(前半29-14)で勝利を収めた。フィジーは、人口100万人に満たない「小国」ながら、そのうち1割がラグビーに携わっているという「ラグビー大国」だ。2016年のブラジル・リオデジャネイロ五輪から始まった「7人制ラグビー」で、同国初の金メダルを勝ち取とり、そのメンバー達は紙幣にもなっているほどである。
大漁旗が上がる中...突き刺さるタックル!
岩手・釜石と言えばかつて「北の鉄人」と呼ばれた新日鉄釜石(現・シーウエイブズ)のお膝元。同チームは元日本代表主将の松尾雄二さんらトップ選手を数多く輩出。また日本選手権では史上最多7連覇(当時)を成し遂げるなど日本ラグビー史に燦然(さんぜん)と輝く「ラグビーの街」のチームである。港町でもある釜石では、新日鉄釜石時代からスタンドに大漁旗が何本も舞うことで知られている。
この日の試合が行われたのは、釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアム。大震災で被害を受けた小中学校の跡地に完成した競技場だ。日本代表とフィジーの過去対戦成績は3勝16敗。世界ランキング11位の日本に対し、フィジーは9位。相手は「フィジアン・マジック」とも呼ばれる、華麗なパスとランニングを誇るチームとして知られる。しかし日本代表は、序盤から「速いディフェンス」を徹底した。
同日、NHKで解説した坂田正彰さん(元日本代表HO=フッカー)は、
「ラグビーって、陣取り合戦でしょ。そこで(ディフェンスにおける)アドバンテージを取ることができたことは、大きな収穫でしたね」
日本代表は、これまで「地獄」と言われる宮崎合宿を行ってきたが、そこでフィットネスやチームへの献身、ボールに対する執着心などを注入されてきた。坂田さんは、
「(両チーム)停滞した中でのボールに対するリアクションが、日本の方が速かった。前半にそれを継続できたことが、勝利につながったのでは」
ボールへの執着心、リアクションの速さ...。この象徴的なシーンが、同日、25歳の誕生日を迎えたFL(フランカー)姫野和樹選手のバースデー・トライだった。前半31分、敵陣ラインアウトからのモールで、ボールを保持。「前が空いていた。思い切って行こうと」と相手ディフェンス2人の間に体をねじ込んでグラウンディング。誕生日を祝福するファンの声に「ありがとうございます。最高です!(過酷な宮崎合宿を経て)成長している実感があります」と汗をぬぐった。
坂田さんは、
「そこでトレーニングしてきたことを『やりきった』『やり切れた』ということが、一番じゃないですか。体力やスキル...いろんなことがありますけれども、それを『出し切れた』というマインド。それが一番、チームに重要なこと」
この言葉に呼応するように、スタジアムを埋め尽くすかのように何本もの大漁旗が舞った。
背番号「10」田村優選手が語った熱き想い...
同試合は、前売りチケットが完売するほどの注目度で、スタジアムがほぼ満員となる1万3135人ものファンが詰めかけた。これには選手たちも、2011年の「東日本大震災」被災地である、岩手・釜石の人たちに感謝の辞を述べた。背番号「10」を背負ったスタンドオフ田村優選手は試合後、
「ここに、何かしらのインパクトを残したいと思っていました。外国人選手も、東北で試合をする意味をしっかり理解していました。しかも(格上の)素晴らしいチームに勝てて、うれしいです」
「ラグビーW杯2019日本大会」は、9月20日に開幕。最終仕上げとなる日本代表は、最高のスタートを切った。
(J-CASTニュース編集部 山田大介)