「悲惨な事件があって、一気に色々と思うことが吹き出してしまった」
コラム中盤では、アニメ界で「学園物」が主流になっていく流れを概説している。その後、学園物に限らずさまざまなジャンルのアニメがヒットするも、学園物を主力とし続けている制作会社として「京都アニメーション」を引き合いに出す。
ただ、続く節では「なぜ学園物が当たったのか。なぜそれがアニメの主流となったのか」として、京アニだけではなく「アニメ業界」における学園物の位置づけを論じている。純丘氏は取材に「この記事において京アニだけの話は途中(編注:当該段落より前)で終わっています」と話す。
つまり当該段落は、文中にもあるように「業界全体」の変化を求める内容だという。純丘氏は「京アニの多くの優秀なクリエーターの命が奪われました。丁寧な作品づくりを続ける京アニの志を、アニメ業界全体で共有し、代理店や局に頼らない体制づくりを今こそ考えようよということです。クリエーターが作りたいものを作れるように、制作会社が合従連衡を組むなどして抜本的に経営体制を見直さないといけない」とする。
だが上記のとおり、「書き方が悪かった」ことは認めている。実は「元々かねて積み上げてきたネタがあって、それを今回の放火事件を受けて編集し、1本の記事にしたのです」と明かし、「だから横道に飛んでいるところもたくさんある。文章の構造が悪いというのはその通りです」と反省を口にする。「悲惨な事件があって、一気に色々と思うことが吹き出してしまった」という。
コラムの削除までにはどのような判断がなされていたのか。純丘氏によると、インサイトナウでの原稿執筆は、公開前に同サイト側の編集チェックを通さない体制になっているといい、「炎上」を受けて同サイト側は一旦、記事削除に踏み切った。純丘氏には事後報告だったという。
その後、同サイト運営会社から再度連絡があり、趣旨だけ分かるよう「京アニ」の言葉を使わないようにして再構成。純丘氏も「もともと京アニを含めたアニメ業界全体の問題を書きたかったのです。補足的なエピソードや『麻薬の売人以下』などの比喩があるとそこだけがクローズアップされてしまう。誤解されるくらいなら省きます」ということで、900字程度にして再公開された。だが、それでも炎上がやむことはなく、同サイト側の判断でまたも削除した。純丘氏は「何を書いても無駄だった」と諦めたように取材に語った。
両親がアニメや映画制作に携わってきたという純丘氏は少年時代から映像作品に親しんできた。京アニ作品もくまなく見ているといい、取材の中でも次から次へと作品名やそこでのテーマ性が語られた。「私は心の底からこの度の放火事件を悲しんでいます。悲しんでいないわけがない。こんな形で命が奪われ、壊されていいのか」と涙声で口にした。そして「間違っても京アニは『麻薬の売人以下』ではありません。京アニはそれと戦ってきた会社です」と繰り返し話していた。
(J-CASTニュース編集部 青木正典)