国民民主党の玉木雄一郎代表がネット番組で憲法改正に前向きな発言を繰り返し、党内に波紋を広げている。安倍晋三首相が国民民主党に秋波を送る中での発言だ。
番組では「私ね、生まれ変わりました」と発言。玉木氏は「従来の考え方を述べたまで」と釈明しているが、それでも「変節」の疑念が広がっている。
「もりかけ」に時間使いすぎて「本当にお詫びを申し上げたい」
玉木氏の発言があったのは、保守系番組「報道特注」で知られる「文化人放送局」の番組。2019年7月25日に配信された。玉木氏は冒頭、国会で「もり・かけ」問題に時間を取ったことで「結果として国政の重要課題について議論をする時間が少なくなってしまった」として、「本当に反省しないといけない。本当にお詫びを申し上げたいと思います」と頭を下げた。その直後に改憲に言及した。
「その上で、私ね、生まれ変わりました。安倍総理、確かに総理の考えと私は違いますけど、憲法改正の議論は、しっかり進めていきましょう!」
さらに、党のあり方について「どこか、とがらないといけませんからね」と説く中で、安倍氏と会談する意向も示した。
「もっとあんまり遠慮せずにね、これからの日本にとって必要だと思うことは、ばしばし言え、ということで、憲法の話もね、我々としては、憲法の改正議論は進めていきますし、安倍総理にもぶつけますよ。だから、安倍総理にも受け取ってもらいたいんですよ」
「秋波を送ってくれてるのは新聞で見たんですけど...」
安倍氏は参院選が開票された翌日の7月22日の会見で、
「国民民主党の方々の中には、憲法改正について議論すべきだと考えている方々もたくさんいらっしゃると私は思っている」
などと発言している。玉木氏も番組で
「秋波を送ってくれてるのは新聞で見たんですけど...」
と反応。司会者の「一本釣りされちゃうよ?」という指摘には、
「一本釣りしたって意味がない。(自民・二階派入りした)細野(豪志)さんみたいになっちゃうんで...」
と応じながらも、党内で改憲に向けた議論を進め、安倍氏と会談を望む考えを繰り返した。
「組織としてひとつの考えをまとめて、それをきちんと、党と党として、最終的には党首と党首として、きちんと話をさせてもらいたいですね」
「私たちは、憲法議論しっかりやりますから、総理の4項目(編注:(1)自衛隊の明記(2)緊急事態対応(3)合区解消・地方公共団体(4)教育充実)には必ずしも賛成ではありません。ただ、憲法議論は、国の最高法規ですから、やりましょう!」
「市民連合」との政策協定との整合性は?
ただ、野党共闘を後押しする民間団体「市民連合」が参院選に先立つ5月29日に、国民を含む4野党1会派と結んだ事実上の政策協定では、憲法については
「安倍政権が進めようとしている憲法『改定』とりわけ第9条『改定』に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くすこと」
とうたっている。玉木氏の発言は、この条項を反故したとも受け取られかねない。党内からも、これに近い懸念がツイッターで相次いでいる。時事通信が玉木氏の発言を
「玉木国民民主代表『安倍首相と会談を』=改憲論議に前向き」
の見出しで報じると、津村啓介副代表は「誤報であることを、祈ります」。原口一博国対委員長は
「国民民主党は私党ではありません。党の綱領と基本政策について草案を作り公式のものとなっています。立憲主義を毀損するいかなる試みも認められません」
と反発。泉健太政調会長は、玉木氏から「生まれ変わった」発言は「選挙を通じ、国会で野党が単に抵抗勢力と見られてはいけない、と意を強くした」の意味で、憲法論については「九条は現行維持。他の人権等を明記する改正に前向き」だと説明を受けたことを明かした。
「生まれ変わった。などとは言うべきではない。誤解を招く」
と苦言も呈したという。
参院選の「政策各論」にも「憲法の議論を進める」
玉木氏もツイッターで釈明した。参院選向け政策パンフレットの最後にある「政策各論」の「憲法の議論を進める」という項目の画像つきで、
「昨日の発言は従来の考え方を述べたまでです。まず積み残しになっている国民投票法改正法案について議論。国民民主党が提出している改正法案にあるCM広告規制の導入は不可欠。安倍総理の9条改憲案には明確に反対。我が党の改憲項目については党内でまとめ、党首討論などで安倍総理に論戦を挑んでいく」
と説明した。「政策各論」には、
「内閣による衆議院解散権の制約、『知る権利』を含めた新しい人権、地方自治の保障等について、国民とともに議論を深めます。国が自衛権を行使できる限界を曖昧にしたまま、憲法9条に自衛隊を明記すべきではありません」
とあり、「自衛隊明記」に否定的な点では一貫している。ただ、番組では憲法をどう改正するかについて言及がないまま「生まれ変わった」と発言したことが疑念を呼んだ面もありそうだ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)